くすりと糖尿病
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原著論文
かかりつけ薬剤師制度が新型コロナウイルス感染症流行下における糖尿病患者の服薬アドヒアランスに及ぼす影響
前田 守長谷川 佳孝月岡 良太大石 美也
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2024 年 13 巻 2 号 p. 132-147

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抄録

目的:2型糖尿病の薬物治療では,服薬アドヒアランスの維持・向上が重要であり,かかりつけ薬剤師の服薬一元管理による服薬アドヒアランス向上が期待され,感染症流行下においても同様である.本研究は,新型コロナウイルス感染症の流行前,流行後における糖尿病患者の服薬アドヒアランスに対するかかりつけ薬剤師制度の効果を明らかにすることを目的とした.方法:当グループの保険薬局628店舗の匿名加工されたレセプトデータを用い,ジペプチジルペプチダーゼ (DPP)-4阻害薬およびメトホルミンを服用する患者を対象に,COVID-19流行前と流行1年目および2年目の3段階の服薬継続率(ギャップ,中断,継続)と薬剤保持率(不良,良好,過剰)を評価し,かかりつけ薬剤師群と非かかりつけ薬剤師群で比較した.結果:かかりつけ薬剤師群の服薬遵守(服薬継続:継続,薬剤保持状況:良好)が良好な患者の割合のオッズ比は,非かかりつけ薬剤師群に対して流行前では有意であった(1.612)が,流行1年目(1.353および流行2年目(1.304)は有意ではなかった.考察:かかりつけ機能の発揮により,DPP-4阻害薬とメトホルミンの服薬アドヒアランスは向上するが,新型コロナウイルス感染症流行下においてはその効果が低下することが示唆された.したがって,感染症流行時でも服薬アドヒアランスを向上させるためには,かかりつけ薬剤師が対面のみならず遠隔でも役割を果たせる環境を整えることが重要と考える.

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© 2024 一般社団法人日本くすりと糖尿病学会
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