2024 年 21 巻 p. 95-105
本研究の目的は,大学体育授業における批判的思考態度と主観的恩恵評価の関係について検討することであった.目的を遂行するにあたり,調査1回目の批判的思考態度を独立変数,主観的恩恵を媒介変数,調査2回目の批判的思考態度を従属変数に付置した分析モデルを設定した.4年制大学で体育授業を受講する学生137名を対象に,質問紙調査を3回実施した.調査内容は,批判的思考態度尺度と主観的恩恵評価尺度であった.分析には共分散構造分析を用いた.本研究で得られた結果は以下の通りである.(1)体育受講前の批判的思考態度の下位尺度から体育受講後の批判的思考態度の全ての下位尺度に正のパスを示し,一部負のパスを示すことが確認された.(2)体育受講前の探究心および論理的思考への自覚から主観的恩恵の全ての下位尺度に正のパスを示すことが確認された.(3)体育受講前の探究心は協同プレーを介して体育受講後の探究心へは正のパス,論理的思考への自覚へは負のパスを示すことが確認された.(4)体育受講前の論理的思考への自覚は体力・身体活動を介して体育受講後の論理的思考への自覚へ正のパスを示すことが確認された.以上のことから,批判的思考態度を高い水準で有していることは主観的恩恵を全面的に高められる可能性が示唆され,このような経験から批判的思考態度を一部育む可能性があることが示唆された.