1989 年 14 巻 3 号 p. 337-344
サリゲニン環状リン酸エステル類 (SCPs) のグルタチオンS-トランスフェラーゼ (GSH-t) の阻害様式について検討した. SCPsそれ自身ではそれほど高い阻害活性を有していないが, 非酵素的にグルタチオン (GSH) と反応することによりGSH-tの阻害活性が増大した. この活性本体は, TLCならびにFAB MSによる分析の結果, S-(2-hydroxybenzyl) glutathione であることがわかった. GSH-t診阻害の速度論的解析から, この抱合体はグルタチオンと拮抗していることがわかった. サリチオンが有機リン殺虫剤抵抗性昆虫に有効であること, これらの系統にK-1, K-2がマラチオン, フェニトロチオンの共力作用を示すことに, このGSH-tの阻害が寄与しているものと推測される.