Journal of Pesticide Science
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ヨトウガ培養表皮の幼虫-蛹への転換に及ぼすエクダイソンと幼若ホルモンの作用
堤内 清志宮台 俊明満井 喬
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1989 年 14 巻 3 号 p. 345-350

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抄録

ヨトウガ終齢幼虫の表皮片を5齢幼虫に移植した. Host が最終脱皮するときに移植片も新表皮を形成した. 終齢2日目までの幼虫表皮は幼虫型の表皮を形成したが, 3~4日目にかけて幼虫表皮形成割合が急激に減少し, それ以後は幼虫表皮を形成することはなかった (すべて蛹型表皮を形成). このことは幼虫から蛹への commitment が3日目に起こることを意味する. 終齢幼虫1日目の表皮片を Grace's medium で前培養して5齢幼虫に移植すると, 培養時間に比例して幼虫表皮形成割合が減少した. 前培養なしでは80%の幼虫表皮を形成したが, 72時間培養するとすべて蛹型表皮を形成した. 一方, Juvenile hormone-I (JH-I) を含む Grace's medium で培養すると72時間後でも幼虫型表皮が形成された. これに対してβ-ecdysone は蛹への commitment を促進する効果があり, 24時間の培養で幼虫表皮を形成することはなかった. 一度, 蛹型表皮に commitment されると, in vitro の条件でJH-Iと接触しても幼虫型表皮に戻ることはなかった. したがって, ヨトウガにおける commitment の転換は真皮細胞からJH-Iが除外されるだけでなくβ-ecdysone が必要であると結論した. JH-Iは10-8Mオーダーで蛹への commltment を抑制した. メソプレンはJH-Iの約1/70の活性があったが, JH-IIIにはほとんど活性は認められなかった. この系においてanti-JHとして知られるEMD, ETB, KK-42とJH-Iとを競合させたが, すべて幼虫型表皮を形成し, 抗幼若ホルモン活性は認められなかった.

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