Journal of Pesticide Science
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収穫後処理したフェニトロチオンの貯穀中における挙動
滝本 善之大嶋 昌子宮本 純之
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1978 年 3 巻 3 号 p. 277-290

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抄録

フェニトロチオン [スミチオン®, O,O-ジメチルO-(3-メチル-4-ニトロフェニル) ホスホロチオエート] のm-メチル基を14Cで標識し, これを6または15ppmの割合で玄米 (水分含量14%) に添加した後, 15℃および30℃に保った. フェニトロチオンの15℃, 30℃での半減期は, 添加濃度に依存せず, 約12ヵ月以上および4ヵ月であり, デスメチルフェニトロチオンおよび3-メチル-4-ニトロフェノールがおもな分解物として同定された. 前者の生成は保存初期にみられ, 15℃, 30℃で添加量の最高10%および20%に達したのに対し, 後者は, 経時的に増加し, 12ヵ月後には各温度で17%および38%になった. これら以外に1,2-ジヒドロキシ-4-メチル-5-ニトロベンゼンとそのO-メチル化物および3-メチル-4-ニトロフェノールのメチル化物が30℃12ヵ月後におのおの3%, 2~3%, 7~9%検出された. またフェニトロオキソンおよびS-メチルフェニトロチオンは最大0.2%見いだされたにすぎなかった. フェニトロチオンおよびその分解物は, 12ヵ月後に玄米の表面から約100μの深さ (胚乳の外層) に達した. これらの玄米を精白することにより, 放射能の約60%が除去され, 精白米中には, フェニトロチオンが15ppm添加直後4ppmであったのが, 12ヵ月後では1ppm残留するにすぎなかった. 玄米, 精白米とも炊飯によってフェニトロチオンの量は約2/3に減少し, デスメチル体および3-メチル-4-ニトロフェノールが生成した. 一方, マラソンの玄米中における半減期は, フェニトロチオンのそれとほぼ同様で, おもにデスメチル体が生成した.

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