日本公衆衛生雑誌
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原著
機能訓練教室の費用便益分析 仮想評価法によって測定された支払意思額を用いて
樋田 美智子武村 真治
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2002 年 49 巻 1 号 p. 29-40

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抄録
目的 市町村で実施されている老人保健法に基づく機能訓練教室に関して,仮想評価法を用いて参加者の支払意思額(Willingness To Pay: WTP)を測定し,WTP を便益とした費用便益分析を行う。
方法 対象地域は横浜市18区とした。平成11年度の機能訓練教室の事業費の決算額,従事した職員およびボランティアの延べ人数,参加延べ人数などの実績データを用いて,各区の参加者 1 人 1 回当たり事業費,人件費,ボランティア費を算出した。平成12年10~11月に実施された機能訓練教室の参加者631人を対象に自記式調査票を配布し,参加者個人の機能訓練教室 1 回当たりの WTP(便益)などを設問した。参加者 1 人 1 回当たり費用として,事業費と人件費を合計した費用 1,費用 1 にボランティア費を加えた費用 2 を算出し,それぞれ18区の最小値から最大値までの範囲を算出した。参加者 1 人 1 回当たり便益として,WTP の中央値,平均値,および95%信頼区間を算出した。そして費用と便益を比較した。
成績 調査票の有効回答率は73.4%であった。WTP は中央値300円,平均値441円,95%信頼区間-800~1,682円であった。WTP と発症期間との負の相関,年間所得との正の相関がみられたが,主観的効果,SF-36との関連はみられなかった。参加者 1 人 1 回当たり費用は,費用 1 が2,079~6,732円,費用 2 が3,289~8,366円で,便益を上回っていた。
結論 機能訓練教室の効率性を厳密に評価するためには,機能訓練教室によって節約された医療費や介護費用の測定,ボランティアや地域住民などの非利用者の便益の測定,機能訓練教室の効果(活動能力の向上や悪化防止,QOL の向上,障害の受容,仲間づくりなど)を明確に把握した上での WTP の測定が必要である。
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© 2002 日本公衆衛生学会
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