日本公衆衛生雑誌
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49 巻 , 1 号
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論壇
総説
  • 紺野 圭太, 奥 祐三郎, 神谷 正男, 土井 陸雄, 玉城 英彦
    2002 年 49 巻 1 号 p. 6-17
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/04/08
    ジャーナル フリー
    Purpose This article focuses on understanding epidemiological features of alveolar echinococcosis and discussing its prevention and control, especially from a viewpoint of the ecosystem and risk management.
    Method Publications on alveolar echinococcosis throughout the world were systematically reviewed with special reference to ecology, epidemiology and countermeasures.
    Results Alveolar echinococcosis, caused by accidental infection with larva of the parasite Echinococcus multilocularis is fatal to humans unless diagnosed at an early stage. No effective control measures have been identified so far because it is difficult to fully understand the ecology of the parasite and its intermediate and definitive hosts. It is also not easy to determine the precise infection route to humans mainly because of the long latent period.
    In Hokkaido, infection rates among red foxes have recently risen even in low endemic districts. Not only stray and domestic dogs but also some pigs in Hokkaido have been found to be infected. While the number of reported human cases is still small, around 10 cases per year, local residents seem to be threatened with the risk of infection.
    Discussion and Conclusions We predict that the incidence of alveolar echinococcosis among humans in Japan will increase in the near future if no effective preventive measures are conducted. In addition, Echinococcus multilocularis infection has the potential to affect the economy of Hokkaido because of its impact on the agricultural and tourist industries.
    Well-designed epidemiological surveys are therefore urgently required, in the context of ecosystem and risk management prior to large outbreaks. International collaboration is also desired.
原著
  • 卯津羅 祥子
    2002 年 49 巻 1 号 p. 18-28
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/04/08
    ジャーナル フリー
    目的 職場および家庭におけるストレス要因が,個人の自覚的健康度,心理学的健康度におよぼす影響について明らかにすること。
    方法 35歳以上の T 市職員1,652人に対して平成10年 2 月に行った自記式アンケートの結果を用いた(回収率82.6%)。回答者1,364人のうち消防士143人を除いた男性828人,女性393人を分析対象とした。対象者を,仕事や家庭生活に不満を感じている群と,不満を感じていない群に分類した。それぞれの群において,仕事の要求度,裁量度,支援度,家庭の決定権,親しい人間関係,年齢の差について t 検定を,また,職業分類,趣味の有無,性別について χ2 検定を行った。次に,自覚的健康度,心理学的健康度に対する職場および家庭の因果関係について共分散構造分析を行った。
    結果 仕事や家庭生活に不満を感じている群では不満を感じていない群に比べて仕事の要求度の得点が高く,仕事の裁量度の得点や支援度の得点,親しい人間関係の得点が有意に低かった。また,不満を感じている群では自覚的健康度,心理学的健康度の得点も有意に低かった。職業分類では,事務系,技術系,教員の係長・主任・一般クラスが仕事や家庭生活に不満を感じていた。共分散構造分析では,職場の因子(仕事の要求度,裁量度,支援度,職種,職位,仕事に対する満足感)が個人的因子(年齢,性別,家庭の決定権,親しい人間関係,家庭に対する満足感)に比べて自覚的健康度,心理学的健康度に対して強い因果関係を示した。個々の観測変数の中では,仕事の裁量度,仕事に対する満足感,親しい人間関係,家庭に対する満足感の因果的な影響力が高かった。
    結論 職場や家庭生活におけるストレス要因が個人の自覚的健康度,心理学的健康度を低くする影響を与えていた。特に,職場の因子,親しい人間関係の影響が高くみられた。職場におけるストレス要因の改善や親しい人間関係の形成が,自覚的健康度,心理学的健康度を改善し,ストレス関連疾患の予防や積極的な健康づくりにおいて重要と考えられる。
  • 樋田 美智子, 武村 真治
    2002 年 49 巻 1 号 p. 29-40
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/04/08
    ジャーナル フリー
    目的 市町村で実施されている老人保健法に基づく機能訓練教室に関して,仮想評価法を用いて参加者の支払意思額(Willingness To Pay: WTP)を測定し,WTP を便益とした費用便益分析を行う。
    方法 対象地域は横浜市18区とした。平成11年度の機能訓練教室の事業費の決算額,従事した職員およびボランティアの延べ人数,参加延べ人数などの実績データを用いて,各区の参加者 1 人 1 回当たり事業費,人件費,ボランティア費を算出した。平成12年10~11月に実施された機能訓練教室の参加者631人を対象に自記式調査票を配布し,参加者個人の機能訓練教室 1 回当たりの WTP(便益)などを設問した。参加者 1 人 1 回当たり費用として,事業費と人件費を合計した費用 1,費用 1 にボランティア費を加えた費用 2 を算出し,それぞれ18区の最小値から最大値までの範囲を算出した。参加者 1 人 1 回当たり便益として,WTP の中央値,平均値,および95%信頼区間を算出した。そして費用と便益を比較した。
    成績 調査票の有効回答率は73.4%であった。WTP は中央値300円,平均値441円,95%信頼区間-800~1,682円であった。WTP と発症期間との負の相関,年間所得との正の相関がみられたが,主観的効果,SF-36との関連はみられなかった。参加者 1 人 1 回当たり費用は,費用 1 が2,079~6,732円,費用 2 が3,289~8,366円で,便益を上回っていた。
    結論 機能訓練教室の効率性を厳密に評価するためには,機能訓練教室によって節約された医療費や介護費用の測定,ボランティアや地域住民などの非利用者の便益の測定,機能訓練教室の効果(活動能力の向上や悪化防止,QOL の向上,障害の受容,仲間づくりなど)を明確に把握した上での WTP の測定が必要である。
資料
  • 木下 朋子, 中村 正和, 近本 洋介, 増居 志津子, 蓮尾 聖子, 木下 洋子, 大島 明
    2002 年 49 巻 1 号 p. 41-51
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/04/08
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,医療機関における禁煙サポートを推進するにあたり,病院看護婦を対象にニーズアセスメントを行い,得られた結果を基礎資料として,医療機関における禁煙サポートのあり方を検討することを目的とした。
    方法 大阪府にあるがん(成人病)専門医療施設に勤務する看護婦32人を対象に,フォーカスグループインタビューを用いた定性調査を実施した。対象者の所属,役職,年齢を考慮し,6 グループにわけて実施した。インタビューの進行は,フォーカスグループインタビューの指導ならびに実施経験をもつ研究者と,その者から指導を受けた 1 人の計 2 人のモデレータが担当した。記録は,各グループ 2 人以上の記録者が筆記するとともに,録音テープで記録した。分析は,モデレータ,記録者,各インタビューに観察者として参加した者が集まり複数の者で行った。
    結果 調査時に行われていた禁煙サポートは,禁煙するよう声をかけるというものが中心で,禁煙のためのカウンセリングや喫煙の健康影響に関する教育・啓発などは行われていなかった。また,看護婦は禁煙サポートを行う上で多くの問題を感じており,禁煙サポートをすすめる上で整えるべき条件,今後の禁煙サポートの進め方についても多様な考えをもっていたことが観察された。
    考察 看護婦の患者への禁煙サポートに対するニーズや考えを幅広く把握することができたことから,本研究にフォーカスグループインタビューを用いたことは有用であったと考えられた。また,インタビューで得られた結果を基礎資料として,医療機関における禁煙サポートのあり方を検討したところ,看護婦をはじめ指導者が禁煙サポートに関する知識や態度を形成し指導スキルを身につけること,禁煙サポートの治療や看護における位置付けを明確にすること,すべての医療従事者とりわけ患者への影響力の強い医師が積極的に禁煙サポートに関与すること,病院内の禁煙サポートの妨げとなる環境を整備すること,病院組織としてすべての職員や関係者が喫煙対策や禁煙サポートを理解している環境が整備されることが必要であると考えられた。したがって,医療機関で禁煙サポートを効果的に推進するためには,指導者トレーニングや環境整備など,多面的な取り組みが必要であると考えられた。
  • 森下 明恵, 高橋 香代, 西河 英隆, 宮武 伸行, 吉良 尚平, 藤井 昌史
    2002 年 49 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/04/08
    ジャーナル フリー
    目的 健康科学センターの拠点機能を調査し,地域との連携状況を全国健康増進施設連絡協議会加盟施設と比較することにより,今後の健康科学センターのあり方を検討した。
    方法 対象は,健康科学センター12施設と全国健康増進施設連絡協議会加盟施設46施設(重複 9 施設)の計49施設である。調査方法は,健康科学センターに対して拠点機能に関する業務実施状況を調査し,健康科学センターと全国健康増進施設連絡協議会加盟施設に対して,地域との連携に関する調査を行い比較した。
    結果 1. 健康科学センターの拠点機能に関する業務は 7 項目すべてについて,80%を超える実施状況であった。
    2. 健康科学センターと全国健康増進施設連絡協議会加盟施設における地域との連携の有無には有意な差はみられなかった。しかし,具体的な連携内容を比較すると,保健所や市町村の指導者に対する研修と教育,行政の施設利用,行政との共同研究,医療機関から紹介された患者の受け入れ,研究機関からの指導や助言,研究機関へデータ分析の依頼,研究機関との共同研究の 7 項目で健康科学センターの実施率が有意に高かった。
    3. 健康科学センターの施設規模の違いによる地域との連携状況の比較では,大規模施設において他の健康増進施設との連携実施率が高かったが,行政との共同研究,研究機関との共同研究に関しては,小規模施設の連携実施率の方が高かった。
    結論 健康科学センターが健康づくりの拠点機能を今後より一層充実させるためには,ソフト面の開発を積極的に行い,科学的データをもとに保健所や市町村保健センター,医療機関,他の健康増進施設,研究機関などと連携を図りながら,広く地域に根ざした集団アプローチを具体的に提案していく必要がある。
  • 沼田 久美子, 藤田 利治
    2002 年 49 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2002年
    公開日: 2015/04/08
    ジャーナル フリー
    目的 新宿区登録結核患者について,治療成功者と比べた治療中断者の特徴を検討する。
    方法 1996年~1999年に新宿区新登録の日本人結核患者のうち治療成功と治療中断について,結核登録カードより得た情報(性別,年齢,婚姻状態,同居者の有無,呼吸器症状の有無,結核の既往,合併症,飲酒状況,喫煙状況,職業の有無,初診時病型,菌検査,発見方法,受診の遅れ,診断の遅れ,および入院期間)に関して比較した。
    成績 女性の治療中断は 2 人と極めてわずかであった。男性に限定して検討したところ,治療成功者と比べた治療中断者の特徴は,婚姻状態が死別・離別,一人暮し,呼吸器症状あり,1 日に 3 合以上の飲酒,ホームレス,入院期間が 2 ヵ月未満などであった。ホームレスについては,入院期間で顕著な違いが認められ,6 ヵ月以上の入院での治療中断の割合は少なく,30歳未満ではすべてが治療中断となっており,一方,呼吸器症状なしでは治療中断はみられなかった。ホームレス以外については,婚姻状態が死別・離別ないし不明の者や一人暮しの者で治療中断が多くみられた。
    結論 治療中断リスクが高いことが明らかになったホームレス結核患者に対して,新宿区では療養支援の一環として2000年 6 月より対面して服薬を直接確認する体制(DOT: Directly Observed Therapy)を開始した。ホームレス以外でも,一人暮しでの治療中断が多いことが明らかになったため,今後このような人々への支援方法も具体的にしていく必要がある。
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