日本公衆衛生雑誌
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医療機関における禁煙サポートのあり方に関する研究 看護婦を対象としたフォーカスグループインタビュー調査結果から
木下 朋子中村 正和近本 洋介増居 志津子蓮尾 聖子木下 洋子大島 明
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2002 年 49 巻 1 号 p. 41-51

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抄録
目的 本研究は,医療機関における禁煙サポートを推進するにあたり,病院看護婦を対象にニーズアセスメントを行い,得られた結果を基礎資料として,医療機関における禁煙サポートのあり方を検討することを目的とした。
方法 大阪府にあるがん(成人病)専門医療施設に勤務する看護婦32人を対象に,フォーカスグループインタビューを用いた定性調査を実施した。対象者の所属,役職,年齢を考慮し,6 グループにわけて実施した。インタビューの進行は,フォーカスグループインタビューの指導ならびに実施経験をもつ研究者と,その者から指導を受けた 1 人の計 2 人のモデレータが担当した。記録は,各グループ 2 人以上の記録者が筆記するとともに,録音テープで記録した。分析は,モデレータ,記録者,各インタビューに観察者として参加した者が集まり複数の者で行った。
結果 調査時に行われていた禁煙サポートは,禁煙するよう声をかけるというものが中心で,禁煙のためのカウンセリングや喫煙の健康影響に関する教育・啓発などは行われていなかった。また,看護婦は禁煙サポートを行う上で多くの問題を感じており,禁煙サポートをすすめる上で整えるべき条件,今後の禁煙サポートの進め方についても多様な考えをもっていたことが観察された。
考察 看護婦の患者への禁煙サポートに対するニーズや考えを幅広く把握することができたことから,本研究にフォーカスグループインタビューを用いたことは有用であったと考えられた。また,インタビューで得られた結果を基礎資料として,医療機関における禁煙サポートのあり方を検討したところ,看護婦をはじめ指導者が禁煙サポートに関する知識や態度を形成し指導スキルを身につけること,禁煙サポートの治療や看護における位置付けを明確にすること,すべての医療従事者とりわけ患者への影響力の強い医師が積極的に禁煙サポートに関与すること,病院内の禁煙サポートの妨げとなる環境を整備すること,病院組織としてすべての職員や関係者が喫煙対策や禁煙サポートを理解している環境が整備されることが必要であると考えられた。したがって,医療機関で禁煙サポートを効果的に推進するためには,指導者トレーニングや環境整備など,多面的な取り組みが必要であると考えられた。
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© 2002 日本公衆衛生学会
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