日本公衆衛生雑誌
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原著
2型糖尿病患者の自己管理行動と認知的スキルとの関連についての検討
竹鼻 ゆかり高橋 浩之
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2002 年 49 巻 11 号 p. 1159-1168

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抄録
目的 認知的スキルのひとつである一般的な自己管理スキルと糖尿病患者特有の自己管理スキルはどのような関連を持ち,またそれらが糖尿病患者の自己管理行動とどのように関連しているかについて検討する。
方法 糖尿病外来に通院する糖尿病患者306人を調査対象者とし,自記式の質問紙と診療記録からの情報収集を行った。質問紙の内容は,患者の属性,一般的自己管理スキル尺度(高橋による自己管理スキル尺度,以下 SMS 尺度),糖尿病患者特有の自己管理スキルについての質問項目(以下糖尿病スキル得点),糖尿病患者の自己管理行動(安酸,木下が作成した尺度の項目を参考として使用)である。
成績 1. SMS 尺度と糖尿病スキル得点は相関を有し,ともに自己管理行動と関連していた。またその度合いは,SMS 尺度よりも,糖尿病スキル得点の方が強かった。
 2. 自己管理行動と関連する要因についてパス解析を用いて検討した結果,糖尿病の自己管理行動と有意に直接関連する要因は,SMS 尺度,糖尿病スキル得点,仕事の有無だった。また,糖尿病スキル得点を媒介として自己管理行動と間接的に関連する要因は,SMS 尺度,知識の程度,家族の支援の程度,仕事の有無だった。また自己管理行動と直接関連している要因の標準偏回帰係数(β)の大きさから,糖尿病スキル得点が自己管理行動に比較的強く関与していることが示された。
結論 糖尿病患者の自己管理行動を改善するためには,糖尿病と関連した認知的スキルを考慮した支援が有効である可能性が示唆された。
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© 2002 日本公衆衛生学会
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