目的 Helicobacter pylori (
H. pylori)のサイトトキシン関連遺伝子 A (Cytotoxin-associated gene A, CagA)陽性株と CagA 陰性株の慢性萎縮性胃炎に対するリスクの評価を行うとともに,慢性萎縮性胃炎に関連する生活習慣要因についても検討した。
方法 福岡県南部の農村地域の基本健康診査を受診した30歳-64歳の住民738人(男295人,女443人)に研究参加を要請し全員から協力を得,対象とした。基本健康診査受診時に生活習慣の情報を得るとともに,採血を行い,
H. pylori 抗体,CagA 抗体,血清ぺプシノーゲンI値(PGI)とぺプシノーゲンII値(PGII)を測定した。
本研究では慢性萎縮性胃炎の診断を PGIと PGIIの値により血清学的に行った。すなわち,PGI<70 μg/
l かつ PGI/PGII比<3.0のものを血清学的慢性萎縮性胃炎とした。
成績 H. pylori 抗体陰性を基準にした時,男では
H. pylori 抗体陽性・CagA 抗体陽性群の慢性萎縮性胃炎に対するオッズ比は4.26 (95%CI, 2.22-8.17),
H. pylori 抗体陽性・CagA 抗体陰性群では3.87 (95%CI, 1.95-7.68)であった。一方,女では前者のオッズ比は4.92 (95%CI, 3.06-7.92),後者では3.02 (95%CI, 1.23-6.35)であった。慢性萎縮性胃炎に対するリスクは CagA 陽性株感染の方が CagA 陰性株感染より大きいことが示唆された。
生活習慣では緑茶の飲用が慢性萎縮性胃炎に対する抑制因子として働いていた。特に,その効果は CagA 陽性株感染の場合に顕著であった。
結論 慢性萎縮性胃炎に対するリスクは CagA 陽性株感染の方が CagA 陰性株感染より大きいことが示唆された。
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