日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
広域的システム構築のための要件と保健所保健婦・士における活動指標
小路 ますみ
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2002 年 49 巻 3 号 p. 188-204

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抄録

目的 地域保健法成立による保健所の改編と機構改革直後の都道府県保健所保健婦の実践例から,広域的システム構築のための要件と活動指標を提示することにある。
方法 資料収集担当者は,福岡県糸島地区における平成 9 年 4 月 1 日から平成11年 3 月31日までの精神保健福祉領域のシステム構築に携わった,著者を含む保健婦経験年数14~21年の 3 人の都道府県保健所保健婦である。データの収集には実践保健婦の回想法による現象観察を用いた。活動指標は,帰納的な質的研究法である Berelson, B. の内容分析を用い,要件は現象学的方法で導き出した。
結果と結論 124の質的データが抽出され,活動指標として16のカテゴリーに分類できた。また,要件として 5 つのカテゴリーが導きだせた。
広域的システム構築には,独立した関係機関・団体との組織間調整が必要であり,要は協働と合意をとりつける会議運営にある。これは,保健所の期待される機能であり,保健所に属する保健婦の強化すべき機能とも言える。
1 広域的システム構築のための要件
要件は,活動指標の各項目に関係性を持ち,活動指標の踏破に必要な条件とも言える。
1) 問題の核心を突き,解決志向を高める「現実的課題」
(1) 現実的課題をとらえる看護の視点
(2) 志気を高める現実的かつ明快な課題提供
2) 活動を支える内外の「共同責任者」
3) システム構築の母体となる「個性・専門性・機能の相互依存・補完関係」
(1) 個人や各関係機関・団体の得心ある協働体制を導く「調整力」
(2) 専門性の発揮を促す「組織全体に関する知識や情報の共有」
(3) 内発的動機づけを高揚させる「個人の尊重」
4) 協働と合意を取り付ける「期待に応える役割調整」
5) 組織を動かす「リーダーシップと組織マネージメントとの統合力」
2 広域的システム構築のための活動指標
活動指標は,会議運営を中心に,その体制づくりと,システム成立時の役割配分,会議運営で得られた協働体制を基とする連動的発展的システム構築へと,大きく 4 段階の構成になっている。特記すべき活動指標は次の通りである。
1) 担当業務と保健所の機能との一貫性をとらえ,保健所の重要施策に位置づけることができる。
2) 有効な媒体活用と相手の感情・気持ちをとらえ,志気を引き出す会議運営ができる。
3) 他の活動への連動的発展構想を立て,実践できる。
4) 達成予測がもてる。

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© 2002 日本公衆衛生学会
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