日本公衆衛生雑誌
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原著
青年期女性における月経痛の頻度とやせとの関連
平田 まり隈部 敬子井上 芳光
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2002 年 49 巻 6 号 p. 516-524

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抄録

目的 10歳代後半から20歳代前半の女性の多くが月経痛のために苦しみ,日常生活に支障を来たしている。それ故に月経痛と関連する日常生活要因を明らかにすることは,若い女性の Quality of Life(QOL)の向上に貢献する。本研究の目的は,やせている者の比率が最も高い青年期女性において食物摂取状況や身体活動度を反映する体格が,月経痛の頻度に関連するかを明らかにすることである。
対象と方法 18歳から21歳の女子大学生2,718人を対象にして2000年 4 月に,身長・体重測定と月経関連項目について自記式アンケート調査を行った。有効回答者2,288人の中,月経周期が 3 か月以上や過短月経の者を除いた2,282人を解析対象とした。月経痛の頻度と年齢,体格,運動,および月経関連項目(初経年齢・月経周期・月経期間・月経量)との関連をロジスティック回帰分析で検討した。
結果 2,282人の解析対象者の中,月経痛がいつもある者は34.1%,時々ある者は48.7%,ほとんどない者は17.2%であった。日本肥満学会の旧判定基準による分類では,やせ(BMI<19.8)群は34.8%,普通(19.8≦BMI<24.2)群は53.8%,過体重(BMI≧24.2)群は11.4%であった。体格の普通群を基準因子とした時,やせ群の「月経痛がいつもある」オッズ比は1.3 (95%信頼区間:1.1-1.6),過体重群のオッズ比は1.1 (95%信頼区間:0.8-1.5)であった。また月経痛がいつもある危険性は,初経年齢が若い者,および月経量が多い者は高く,月経周期が不規則な者は低かった。
結論 調査対象とした女子大学生において,月経痛の有訴率は82.8%と高かった。月経時にいつも痛みがある危険性は,体格が普通である者より BMI が19.8未満のやせた者に高いことが明らかになった。BMI が19.8未満の者は,日本の15歳から24歳の女性の半数近くを占めることを考慮すると,月経痛を緩和して QOL を高めるために,青年期女性のやせ志向性への対策が重要であることを本研究の結果は示唆するものである。

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© 2002 日本公衆衛生学会
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