日本公衆衛生雑誌
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大学生の生活習慣病に関する意識,知識,行動について
門田 新一郎
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2002 年 49 巻 6 号 p. 554-563

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抄録

目的 生活習慣病の予防は,学校健康教育の現代的課題としてその重要性が指摘されている。そこで,大学生の生活習慣病に関する意識,知識,行動について調査し,その実態を明らかにして,学校健康教育の在り方を検討する際の基礎資料にする。
方法 某国立大学の学生783人を対象に,質問紙法による無記名式で調査した。調査内容は,生活習慣病に関する予防態度,関心,不安,知識,健康行動・意識である。無回答の項目がある者を除いた736人(男子367人,女子369人)を分析対象とし,性別比較,および,予防態度と関心・不安,健康行動・意識との関連について検討した。
成績 生活習慣病の予防態度では,喫煙と飲酒では積極的態度をとっている者が70~85%みられたが,食生活と運動・スポーツでは少なかった。
 生活習慣病の定義をよく知っている者は75%程度みられたが,学習意欲がある者や情報収集をしている者は少なく,生活習慣病への不安のある者も少なかった。
 定期健康診断の受診意欲はほとんどの者が持っているが,当該年度に受診しなかった者が10.6%みられた。
 主要死因,食塩の過剰摂取,肥満,糖尿病,高コレステロール血症,大腸がんに関する知識の正答率は21~97%と差が大きかった。
 健康行動では朝食欠食や運動不足の者が30~60%とみられたが,喫煙しない者は90%と多くなっていた。健康意識では健康の自己評価の低い者や目覚めの良くない者が10~35%みられた。
 性別比較では,予防態度,関心,受診状況,知識,健康行動・意識ともにかなり差がみられた。運動・スポーツで男子に実施している者が多かったが,それ以外の項目では女子に意識,関心が高く,知識の正答率も高くなっていた。また,女子に健康的な行動をとっている者が多くなっていた。
 生活習慣病の予防態度と関心,受診状況,健康行動・意識には関連のみられるものが多かった。予防に積極的態度のみられる者は関心も高く,健康的な行動とっている者や健康意識の高い者が多くなっていた。
結論 大学生の生活習慣病に関する意識,知識,行動についてみると,予防態度はあまり積極的ではなく,関心も低かった。また,知識も不十分で,受診状況,健康行動・意識にも問題がみられた。これらのことから,大学での健康教育の推進は言うまでもなく,小,中,高等学校における健康教育の一層の充実が必要であると考えられた。

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© 2002 日本公衆衛生学会
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