日本公衆衛生雑誌
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ドイツのウイルス性出血熱輸入例対策 WHO 新興ウイルス感染症対策指針に基づく日本の現行システムとの比較
田中 毅高橋 央大山 卓昭岡部 信彦内田 幸憲
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2002 年 49 巻 6 号 p. 564-573

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抄録

目的 経験豊富なドイツの現状を調査することで,日本におけるウイルス性出血熱輸入例対策の現状を評価した。
方法 ドイツではロベルトコッホ研究所のウイルス性出血熱対策担当者と面談し,ベルリン,ライプチッヒの高度隔離病床を視察した。日本では成田赤十字病院,りんくう総合医療センターを訪問し,両国間のウイルス性出血熱対策の相違を World Health Organization(WHO,世界保健機関)が1994年に提唱した「新興ウイルス感染症克服のための行動指針」に沿って比較した。
結果 ドイツでウイルス性出血熱の疑い患者が発生した場合,自治体指令センターの公衆衛生医が隔離を決定し,患者は国内に 5 施設ある隔離センターに専用車両で搬送される。ベルリンの病床はベッド全体がビニール製の隔壁で覆われた旧式で,高度医療は困難である。新型のライプチッヒのベッドは二重陰圧管理で,ベッド周囲が広く,高度医療が可能である。また出血熱患者がいない時には,耐性菌感染患者等を入院させて職員のトレーニングを行っている。
 感染症サーベイランスの強化,国立試験検査機関の充実,実用化を前提とする感染症研究の推進という 3 つの目標については,両国とも最近改正された感染症に関する法律に則って,質の向上が継続されており,両国間に大きな差異はみられなかった。もう 1 つの目標である感染症を予防,制圧する戦略の策定では,相違点が複数認められた。第 1 にドイツではウイルス性出血熱対応の主体は自治体であり,有事には自治体中心に対策チームが速やかに編成されること,第 2 に日本の方針と異なり,ドイツの高度隔離病床は合計10床であること,第 3 に日本の隔離病床では飛沫感染対策が十分とはいえないこと,最後に,ドイツでは職員の訓練を兼ねて,耐性菌感染患者などを高度隔離病床に入床させていたのに対して,日本の高度隔離病床では空床利用されていないこと,であった。
結論 今後わが国では下記の諸点,1) 国立試験検査機関機能の更なる充実,2) ウイルス性出血熱患者対応に関する検疫所,自治体,国立試験検査機関の連携の必要性,3) 隔離病床数と設置地域の再検討,4) より実用的な隔離病床の構造,運用,利用法の確立,5) 高度耐性菌感染症患者による空床活用の是非,6) 医療従事者,その他関係者への新興再興感染症の教育実施,が重要であると考えられた。

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© 2002 日本公衆衛生学会
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