日本公衆衛生雑誌
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中華人民共和国の看護職者が捉えている高齢者の生活と健康に関する意識調査
藤田 啓子箆伊 久美子井上 和子〓 玉秀美ノ谷 新子福嶋 龍子松下 裕子拜原 優子宮本 郁子王 坤英車 光霄馬 竹蘭〓 廉堅王 玲莉安 昆利楊 和平張 保齢梶山 祥子五島 瑳智子
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2002 年 49 巻 6 号 p. 544-553

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抄録

目的 1990年代から中国社会においても高齢化現象が急速に進んでいる。特に農村部から都市部への人口の大規模な移動は,従来の家族形態にも変化を来たし,高齢者の健康や生活に大きな影響を及ぼしている。このような状況下で,健康や医療に携わっている看護職者の高齢者に対する意識を知るために,看護職者が高齢者と考える年齢,高齢者が抱えていると看護職者が捉えている問題・健康管理方法・趣味・娯楽および老親の同居・世話について調査した。
方法 自作の質問紙を,中国衛生部が選定した遼寧省,山西省,貴州省,湖北省,吉林省,江蘇省,湖南省,寧夏回族自治区に勤務する看護職者に配布し,有効回答3,396を得た。
結果 1. 看護職者が高齢者と考えている年齢は,50歳以上~70歳以上に分布し,看護職者の87.5%は60歳以上を高齢者とみなしていた。遼寧省,山西省,吉林省,江蘇省では約30%の者が70歳以上と回答していたが,山西省を除いた 3 省は経済開発地区であり,高齢化率の高い地域である。
 2. 高齢者が抱えていると考えられる問題は,健康問題81.1%,生活費の問題14.3%,家族との同居問題11.3%,住居の問題7.5%であった。
 3. 健康管理方法では60%以上の高齢者が早寝早起き,約40%の者が栄養に注意,健康診断は約20%であった。
 4. 高齢者の趣味娯楽については看護職者の62.4%がテレビの視聴をあげていた。家族の団欒34.8%,友人との会話が約36%であった。
 5. 両親が高齢になった時の同居と世話については,約60%の者は「する」と回答していた。17~30歳群と31~60歳群の 2 群間では17~30歳群の方が有意に高く(P<0.01),地域別では寧夏自治区,山西省で差が認められた(P<0.01, P<0.05)。
考察 看護職者の約50%の者が65歳以上を高齢者と見なしており,わが国と同様の結果を示していた。高齢者の趣味・娯楽としては,テレビ視聴という回答が一番多かった。また,高齢者問題では健康問題とした者が80%以上を占め,わが国の健康問題より高かったが,これは高齢化が急速に進む一方で,社会保障制度が整備途上にあるためと考えられる。

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© 2002 日本公衆衛生学会
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