日本公衆衛生雑誌
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原著
特定疾患治療研究対象疾患評価に関する研究
伊津野 孝杉田 稔大田原 由美吉田 勝美武藤 孝司田村 誠宮川 公男稲葉 裕黒沢 美智子杉森 裕樹須賀 万智
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2002 年 49 巻 7 号 p. 672-682

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抄録

目的 特定疾患対策対象疾患(難病)の疾病対策上の優先順位を評価する。
方法 全国の大学医学部の衛生・公衆衛生学関係者に対して,難病対策の優先順位をつけるための重み付けの調査を行うとともに,難病の臨床班の班長に対して難病の実状を把握するための調査を行い,両者の回答より難病対策の優先順位を付ける。
成績 難病対策の「疾患の稀少性」,「原因・病態の解明度」,「治療法の未確立」,「生活面への影響」の 4 要素の重みづけは,100点満点とした場合,それぞれの平均値は14.5, 27.1, 28.5, 29.9点となり,疾患の稀少性が最も低い重みづけとなった。各要素内でのその要素を把握する項目の重要度を評価したところ,「疾患の稀少性」の要素では,「全国の患者数が少ないこと」と「全国の専門医数が少ないこと」,「原因・病態の解明度」の要素では,「発症機序が解明されていないこと」と「診断基準が確立されていないこと」,「治療法の未確立」の要素では,「有効と考えられる治療法が無いこと」と「5 年生存率が低いこと」,「生活面への影響」の要素では,「日常生活で介助の必要な患者の割合が高いこと」と「就労・就学(社会参加)に支障をきたす患者の割合が高いこと」が重要となった。
結論 臨床班の班長に対する難病の実状調査にこの結果を合わせることにより,118疾患の難病対策上の優先順位を評価したところ,現在医療費補助がある治療対象疾患が上位を占めることはなく,難病対策を見直す必要性があることが示唆された。

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© 2002 日本公衆衛生学会
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