日本公衆衛生雑誌
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家族および家族外からのソーシャル・サポートと高齢者の心理的 QOL との関連
柳澤 理子馬場 雄司伊藤 千代子小林 文子草川 好子河合 富美子山幡 信子大平 光子
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2002 年 49 巻 8 号 p. 766-773

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抄録
目的 本研究の目的は,家族および家族外からのソーシャル・サポートと,高齢者の心理的 QOL との関連を明らかにすることである。
方法 対象は三重県内 3 市町(工業都市,漁村,山村)に在住する65歳以上の在宅高齢者216人で,老人会集会および老人会会員を対象とした保健婦による健康相談の場で,自記式質問紙を用いた集合調査を実施した。心理的 QOL を,「①現在,孤独感や不安感が低く情緒的に安定しており,②エリクソンによる老年期の心理社会的発達課題である「統合 対 絶望」に際して,自己の人生をかけがえのない,満足できるものとして受けとめており,かつ死に対しても受容している状態」と定義し,前者を測定するために PGC モラール・スケールを,後者を測定するためにエリクソン心理社会的発達段階目録検査(EPSI)を使用した。PGC モラール・スケールは対象者において因子構造を確認したところ,「心理的安定」,「加齢に対する態度」の 2 因子が抽出されたため,以後の分析はこの 2 因子で実施した。EPSI は「人生の受容」の 1 因子性であることが確認された。ソーシャル・サポート尺度は,家族および家族外をサポート源とし,手段的サポートおよび情緒的サポートから構成される指標を,独自に作成した。統御変数として,年齢,性別,家族構成,ADL,教育歴等を尋ねた。
 サポートと心理的 QOL との関連を分析するため,仮説モデルを設定しパス解析を行った。家族および家族外からのサポート提供が,主観的幸福感の下位概念である「心理的安定」および「加齢に対する態度」に影響を及ぼすと仮定した。両サポートはまた,直接に,あるいは「心理的安定」および「加齢に対する態度」を介して,「人生の受容」に影響を及ぼすと仮定した。
成績 家族からのサポートは心理的安定に有意に影響し,加齢に対する態度には有意な傾向を示した。また家族からのサポートは,これらを介して人生の受容に影響を及ぼしていた。一方家族外サポートからは,心理的安定,加齢に対する態度,人生の受容のいずれに対しても有意なパスは得られなかった。
結論 対象高齢者にとって家族からのサポートは心理的安定や加齢に対する肯定的態度を促進する役割を果たし,それによって人生の受容というより長期的な心的作業にも,肯定的に作用するものと考えられる。一方家族外のサポートは,心理的 QOL に有意な効果がみられなかったが,本調査では対象が限定されていたため,今後はより広範囲な高齢者を対象とするとともに,サポート提供および地域差との関連も研究していく必要がある。
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© 2002 日本公衆衛生学会
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