日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
豊島区のコロモジラミ対策 衛生と福祉の連携によるマニュアル作成と啓発活動の実践報告
関 なおみ日向 君子中川 ゆう子矢口 昇牧上 久仁子
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2002 年 49 巻 9 号 p. 941-947

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抄録

現状 豊島区では以前より衛生害虫対策の一環としてシラミ類に関する相談統計を取っており,年 4 回行っている路上生活者対策の中でコロモジラミ保有者の数が毎年増加していることが知られていたが,平成 8 年ごろより高齢者,障害者のコロモジラミ発生例が注目されるようになった。平成11年には独り暮らし高齢者宅で発生があり,在宅サービス提供が困難だった事例もあった。コロモジラミは日本において一般に絶滅したと考えられており,高齢者および障害者福祉に関わる職員の間に意識がなく,医療関係者でも知識が不十分である。このためコロモジラミが発生していたとしても発見が困難であり,また発見したとしても相談の場がなく対応出来ない状況になっていると思われたため,コロモジラミに関する正しい知識の普及と対策が急務と思われた。
分析と結果 コロモジラミ対策について関係機関で検討会を実施し,保健福祉センター医師が中心となり,在宅サービス提供事業者および高齢者の保健福祉に関わる職員向けにコロモジラミの生態と対策について解説したマニュアルを作成した。これを区内関係機関に配布すると共にホームページに掲載し,各職員,民間ホームヘルパーを対象とした研修会を開催した。
まとめ コロモジラミは塹壕熱,発疹チフスなどの伝染性疾患を媒介する可能性があり,衛生面からの対策が求められる。一方福祉面からは高齢者介護にあたって,ケア提供者へのコロモジラミの感染拡大防止対策ならびに適切な情報提供が必要である。各関係機関が連携し,マニュアルの作成と研修を行うことで成果を上げることが出来た。

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© 2002 日本公衆衛生学会
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