日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
沖縄県の結核患者管理における結核菌遺伝子型同定の有用性
沖縄県結核サーベイランス検討委員会
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2003 年 50 巻 4 号 p. 339-348

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抄録

目的 沖縄県において結核患者管理の中で実施されている接触者疫学調査や,結核発生動向調査事業(サーベイランス)の質的向上のために,結核菌 RFLP 分析を応用する事の有用性について検討する。
方法 1996年 4 月以降1997年 9 月迄の期間に,新たに登録された結核患者から分離培養された結核菌に RFLP 分析を実施した。2 人以上の患者から得られた結核菌 RFLP バンド型が一致していることが判明した場合,それらの患者が登録されている保健所(複数に渡る事もあり得る)で,通常実施されている接触者疫学調査内容とその一環として実施した再調査内容について検討し,患者間の疫学的な繋がりの有無・程度に関して分析・検討を行った。
結果 沖縄県における結核患者を診断している主な病院と,県保健所検査室で分離培養された結核菌を結核研究所に送付して RFLP 分析を実施した。沖縄県と保健所は,RFLP 分析の結果に基づいて疫学調査を実施した。本事業の成績に関しては,沖縄県結核サーベイランス検討委員会によって総合的に検討された。同期間中に菌陽性患者として登録された患者の内,75%以上の患者から得られた結核菌株が結核研究所に送付された。同期間中,229人の結核患者から得られた263検体について RFLP 分析が実施された。その内17のクラスターが判明し,クラスターを構成する患者の数は,2 人から10人であった。その内 5 つのクラスターにおいて,クラスター内の幾人かの人達の間で,家族関係や交友関係があった。あるクラスターでは,RFLP 分析結果が判明する前には明らかでなかった共通感染源が,その後の疫学調査で明らかになった。一方,ある地域に住む多数の患者によって構成されるクラスターが存在し,共通感染源や疫学的繋がりは判明せず,限定された地域における地域流行型結核菌による感染によることが示唆された。複数のクラスターで,通常保健所が実施している接触者疫学調査により判明していた患者間の接触状況も,RFLP 分析の結果より強く支持できた。
結論 沖縄県においては,RFLP 分析は以下の点について結核対策活動改善のために有用と考えられた。第一に,ある集団における結核感染の疫学的状況を把握する。第二に,通常の接触者調査によっては把握することが出来なかった共通感染源を見つけ出す。第三に,通常の保健師が行う接触者疫学調査活動を支援する。

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© 2003 日本公衆衛生学会
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