日本公衆衛生雑誌
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原著
関東都市部における1歳6か月時から3歳時にかけてのう蝕発生と授乳状況ならびに関連する要因の検討
溝口 恭子輦止 勝麿丹後 俊郎簑輪 眞澄
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2003 年 50 巻 9 号 p. 867-878

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抄録

目的 近年,乳幼児のう蝕有病者率は著しい減少傾向にあるが,川崎市中原区における 3 歳児のう蝕有病者率は,1 歳 6 か月児のそれに比べ約 5 倍の増加がみられる。そこで,1 歳 6 か月時から 3 歳時にかけてのう蝕発生に関わる要因として,乳幼児期の家庭環境,生活習慣,食習慣,歯科保健行動について検討した。
方法 平成13年 6 月から 9 月に川崎市中原保健所において 3 歳児健診を受診した者のうち,同保健所にて 1 歳 6 か月児健診を受診し,その健診においてう蝕のなかった者491人を調査対象とした。1 歳 6 か月児および 3 歳児健診結果,3 歳児健診時のアンケート調査票の結果を用いて,3 歳時のう蝕の有無別に比較検討した。う蝕発生と本研究で用いた要因について単変量解析で関連の強い要因を選択し,次に,選択された要因相互の関連性を調整したう蝕発生要因の決定にロジスティック回帰分析を適用した。
結果 1 歳 6 か月時から 3 歳時にかけてのう蝕発生と有意に関連するリスク要因は,1 歳 6 か月時の母乳摂取「あり」(う蝕発生オッズ比2.80,95%CI:1.42-5.57),3 歳時の 1 日 3 回以上の甘味飲食「あり」(う蝕発生オッズ比2.07,95%CI:1.24-3.43)であった。保護者による毎晩の仕上歯みがきを「していない」のう蝕発生オッズ比は1.68(95%CI:0.90-3.14)と大きい傾向を示したが,有意ではなかった。
結論 1 歳 6 か月時に母乳摂取を継続していると 1 歳 6 か月時から 3 歳時にかけてのう蝕発生のリスクが高まることが示唆された。また,3歳時で 1 日 3 回以上の甘味飲食の習慣がある児にう蝕「あり」の割合が高いことも示唆された。

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© 2003 日本公衆衛生学会
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