日本公衆衛生雑誌
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原著
地域在宅高齢者の外出頻度別にみた身体・心理・社会的特徴
藤田 幸司藤原 佳典熊谷 修渡辺 修一郎吉田 祐子本橋 豊新開 省二
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2004 年 51 巻 3 号 p. 168-180

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抄録

目的 地域高齢者における外出頻度の健康指標としての妥当性を検討するとともに,低い外出頻度に関わる要因を明らかにすることである。
方法 新潟県与板町在住の65歳以上全高齢者1,673人を対象に面接調査を行い,身体・心理・社会的特徴を調べた。得られた結果を,ふだんの外出頻度 4 群間(毎日 1 回以上,2~3 日に 1 回程度,1 週間に 1 回程度,ほとんどない)で比較し,外出頻度の外的基準妥当性を検討した。また,低い外出頻度に関わる要因を明らかにするため,「毎日 1 回以上」vs.「2~3 日に 1 回程度」あるいは「1 週間に 1 回程度以下」を目的変数とし,性・年齢を調整しても有意な関連性を認めた変数をすべて説明変数に投入した多重ロジスティック回帰分析(強制投入法)を行った。
結果 入院・入所中,長期不在,すでに死亡であったものを除く1,588人のうち1,544人(男性39.7%,女性60.3%)から回答が得られた(応答率97.2%)。外出頻度の分布は,全体では「毎日 1 回以上」76.3%,「2~3 日に 1 回程度」13.1%,「1 週間に 1 回程度」3.7%,「ほとんどない」6.9%であった。65~69歳を除く各年齢階級においては,外出頻度の分布に性差はみられなかったが,男女とも80歳以降になると明らかに外出頻度は低かった。
 外出頻度の低い高齢者は,ほとんどすべての身体・心理・社会的な側面で健康水準が低かった。外出頻度は,総合的移動能力レベル,老研式活動能力指標あるいは GDS 短縮版の得点と強い相関性を示した。外出頻度が「週 1 回程度以下」であることの独立した関連要因(カテゴリー)は,年齢(高い),歩行障害(あり),転倒不安による外出制限(あり),心疾患の既往(あり),手段的自立や社会的役割(障害あり),近所づきあいの頻度(週 1 回以下),集団活動への参加(なし),散歩・体操の習慣(なし),油脂類の摂取頻度(2 日に 1 回未満)であり,一方,「2~3 日に 1 回程度」であることのそれは,就労(なし),脳血管障害の既往(あり),抑うつ度(GDS 短縮版得点 6 点以上),近所づきあいの頻度(週 1 日以下),集団活動への参加(なし),油脂類の摂取頻度(1 日に 1 回末満)であった。
結論 地域高齢者においては外出頻度が低いほど身体・心理・社会的側面での健康水準は低く,すでに信頼性・妥当性が検証されている健康指標との相関性も高かったことから,外出頻度は地域高齢者の包括的な健康指標の一つとみなすことができよう。

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© 2004 日本公衆衛生学会
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