日本公衆衛生雑誌
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51 巻 , 3 号
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原著
  • 武田 俊平
    2004 年 51 巻 3 号 p. 157-167
    発行日: 2004年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル フリー
    目的 介護保険における65歳以上の要介護等認定者について,認定 2 年後(730日後)の生死と要介護度の変化をコホート調査することにより,要介護等認定者の予後に影響を及ぼす因子を解明して,要介護者を減らす対策を立てる。
    方法 1999年10月21日から2000年 4 月27日にかけて,要支援以上の要介護度を認定された仙台市太白区在住65歳以上の要介護等認定者2,386人(男702人,女1,684人)について,認定 2 年後における生死を従属変数とし,性別,年齢階級,現住所,初回要介護度,要介護疾患の 5 項目を独立変数とする多変量ロジスティック回帰分析を行った。さらに,認定 2 年後に生存中の要介護等認定者1,549人(男440人,女1,109人)について,認定 2 年後における要介護度悪化の有無を従属変数とし,前記 5 項目を独立変数とする多変量ロジスティック回帰分析を行った。
    結果 65歳以上の要介護等認定者において,認定 2 年後の生存に関するオッズ比は,男のオッズ比=1 に比較すると,女は2.00と有意に高かった。65-69歳の者のオッズ比=1 と比較すると,85歳以上の者の生存のオッズ比は0.59と有意に低かった。初回要支援認定者のオッズ比=1 と比較すると,要介護 2 認定者の生存のオッズ比は0.46,要介護 3 認定者は0.33,要介護 4 認定者は0.26,要介護 5 認定者は0.15と,初回要介護度が重度なほど,生存のオッズ比が有意に低かった。要介護疾患および現住所別に見た場合には,生存のオッズ比に有意差がなかった。
     認定 2 年後に生存中の要介護等認定者において,認定 2 年後の要介護度悪化に関するオッズ比は,65-69歳の者のオッズ比=1 と比較すると,80-84歳の者で1.82, 85歳以上の者で1.98と有意に高かった。また,要介護疾患がアルツハイマー病のときのオッズ比=1 と比較すると,要介護度悪化のオッズ比は,詳細不明の痴呆で0.48,クモ膜下出血で0.11,脳出血で0.42,脳梗塞で0.43,筋骨格系疾患で0.24,その他の疾患で0.36と有意に低かった。性別と初回要介護度と現住所別に見た場合には,要介護度悪化のオッズ比に有意差がなかった。
    結論 65歳以上の要介護等認定者について,認定 2 年後の生死と要介護度の変化をコホート調査した。女は男よりも2.0倍生存者が多く,女の要介護者の増加が懸念される。80-84歳の者と85歳以上の者は65-69歳の者より要介護度の悪化者が多かったが,初回要介護度が重度なほど生存者が少なく,65-69歳よりも85歳以上のときの生存者が少ないので,必ずしも高齢化の進行に伴って要介護者が増加するわけでないと考えられる。アルツハイマー病に比べると,血管性痴呆を除き,すべての要介護疾患において要介護度の悪化者が少なかった。
  • 藤田 幸司, 藤原 佳典, 熊谷 修, 渡辺 修一郎, 吉田 祐子, 本橋 豊, 新開 省二
    2004 年 51 巻 3 号 p. 168-180
    発行日: 2004年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル フリー
    目的 地域高齢者における外出頻度の健康指標としての妥当性を検討するとともに,低い外出頻度に関わる要因を明らかにすることである。
    方法 新潟県与板町在住の65歳以上全高齢者1,673人を対象に面接調査を行い,身体・心理・社会的特徴を調べた。得られた結果を,ふだんの外出頻度 4 群間(毎日 1 回以上,2~3 日に 1 回程度,1 週間に 1 回程度,ほとんどない)で比較し,外出頻度の外的基準妥当性を検討した。また,低い外出頻度に関わる要因を明らかにするため,「毎日 1 回以上」vs.「2~3 日に 1 回程度」あるいは「1 週間に 1 回程度以下」を目的変数とし,性・年齢を調整しても有意な関連性を認めた変数をすべて説明変数に投入した多重ロジスティック回帰分析(強制投入法)を行った。
    結果 入院・入所中,長期不在,すでに死亡であったものを除く1,588人のうち1,544人(男性39.7%,女性60.3%)から回答が得られた(応答率97.2%)。外出頻度の分布は,全体では「毎日 1 回以上」76.3%,「2~3 日に 1 回程度」13.1%,「1 週間に 1 回程度」3.7%,「ほとんどない」6.9%であった。65~69歳を除く各年齢階級においては,外出頻度の分布に性差はみられなかったが,男女とも80歳以降になると明らかに外出頻度は低かった。
     外出頻度の低い高齢者は,ほとんどすべての身体・心理・社会的な側面で健康水準が低かった。外出頻度は,総合的移動能力レベル,老研式活動能力指標あるいは GDS 短縮版の得点と強い相関性を示した。外出頻度が「週 1 回程度以下」であることの独立した関連要因(カテゴリー)は,年齢(高い),歩行障害(あり),転倒不安による外出制限(あり),心疾患の既往(あり),手段的自立や社会的役割(障害あり),近所づきあいの頻度(週 1 回以下),集団活動への参加(なし),散歩・体操の習慣(なし),油脂類の摂取頻度(2 日に 1 回未満)であり,一方,「2~3 日に 1 回程度」であることのそれは,就労(なし),脳血管障害の既往(あり),抑うつ度(GDS 短縮版得点 6 点以上),近所づきあいの頻度(週 1 日以下),集団活動への参加(なし),油脂類の摂取頻度(1 日に 1 回末満)であった。
    結論 地域高齢者においては外出頻度が低いほど身体・心理・社会的側面での健康水準は低く,すでに信頼性・妥当性が検証されている健康指標との相関性も高かったことから,外出頻度は地域高齢者の包括的な健康指標の一つとみなすことができよう。
  • 福田 英輝, 新庄 文明, 高鳥毛 敏雄, 中西 範幸, 多田羅 浩三
    2004 年 51 巻 3 号 p. 181-189
    発行日: 2004年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル フリー
    目的 市町村が行う基本健康診査にひきつづいて行われる事後措置の実施と健診結果の経年的データの利用との関連について明らかにする。
    対象と方法 全国3,255市町村における老人保健事業担当課に対して老人保健法で定められた保健事業の実績等についての質問紙調査を1999年 1 月に実施した。有効回答があった市町村は,2,447(回収率75.2%)であった。事後措置に関する質問項目は,要医療の者に対する「受診勧奨(必要な者全員)」,および「全員の受診確認」,要精検の者に対する「受検勧奨(必要な者全員)」,および「全員の受検確認」,生活習慣改善指導の対象者に対する「個別健康相談」,および「訪問指導」,要指導の者に対する「個別健康相談」,および「訪問指導」であった。それぞれの事後措置について,健診結果の経年的データの利用,および人口当たり保健師数との関連について分析を行った。
    結果 要医療の者,要精検の者,生活習慣改善指導の対象者,および要指導の者に対する事後措置を実施している割合は,市町村の人口規模にかかわらず,経年的データの利用,および人口当たりの保健師数と関連がみられた。また,経年的データを利用している市町村の割合は,健診方式と有意な関連があり,「医療機関における個別健診」で最も小さく,「集団健診」で最も大きかった。
    結論 基本健康診査の結果にもとづいた事後措置の実施は,健診結果についての経年的データの利用,および市町村における人口当たり保健師数と有意な関連がみられた。
公衆衛生活動報告
  • 中島 正夫, 谷合 真紀, 長瀬 ゑり奈, 居波 由紀子, 上野 敦子, 窪田 いくよ, 新谷 由加里, 杉山 朱実, 高野 智子, 田中 ...
    2004 年 51 巻 3 号 p. 190-196
    発行日: 2004年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル フリー
    目的 「保健所母子保健計画の策定」「障害を持つ児の地域ケア対策の検討」「職場での禁煙支援対策の検討」に PRECEDE-PROCEED モデル(以下「モデル」という。)を利用した経験を通し,地域保健対策の検討にあたり留意すべきことを明らかにすることである。
    事例1 モデルを利用して策定した保健所母子保健計画中,「乳幼児期」の内容を一般的な方法を用いた計画の内容と比較した結果,次の点で差が認められた。
    ①モデル利用計画の方がより保護者の QOL に配慮した内容となっていた。
    ②一般的な方法を用いた計画では保護者への直接的支援対策が主であるのに対し,モデル利用計画では「周囲のサポート」の視点から発想の拡がりが認められた。
    ③モデル利用計画では「虐待が疑われる事例の通報」などの対策が導き出されなかった。
    事例2 モデルを用いて検討した障害を持つ児の地域ケア対策について,一般的な方法で中間的にとりまとめられていた対策と比較したところ,次の点で差が認められた。
    ①モデル利用対策の方がより保護者の QOL に配慮した内容となっていた。
    ②モデル利用対策の方が「周囲のサポート」の視点から発想の拡がりが認められた。
    ③モデル利用対策では,「障害を持つことが明らかな事例への NICU 入院中からの関わり」という対策は導き出されなかった。
    事例3 モデルを用いて導き出された総合的な禁煙支援対策について対象者に確認したところ,個別健康教育,禁煙に取り組む仲間づくり,空間分煙,職員全体への情報提供(離脱症状等)などは有効と考えていたが,有効と考えない対策もあった。
    結論 (1)一般的な方法で地域保健対策を検討する際は,「対象者の QOL」や「周囲のサポート」という視点に十分留意する必要がある。
     (2)モデルを利用する際,第 1 段階で対象者の QOL の抽出に十分な時間を注ぐことがポイントの一つと考えられる。
     また,対象者のエンパワメントの観点から,さらには,モデル利用で得られる検討結果はヒアリングなどを行った対象者の意識に依存する恐れがあることや対象者が有用と考えない(希望しない)対策もあり得ることから,対象者の代表の検討への参画が必要であることが示唆された。
     (3)モデル利用では,虐待が疑われる事例への介入として「管理的対策」は導き出されないことから,健康危機管理対策が必要となる分野では,モデルにとらわれない検討も必要となる。
資料
  • 斉藤 功, 土肥 祥子, 嶌岡 英起, 米増 國雄, 伊南 冨士子
    2004 年 51 巻 3 号 p. 197-204
    発行日: 2004年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル フリー
    目的 健康づくり計画策定のために30歳以上の住民全体を対象として実施された調査成績,ならびに基本健康診査受診者に行った尿中コチニン検査などの成績に基づき,地域における環境中タバコ煙(ETS)曝露の現状を把握すること。
    方法 大分県 M 町において,住民基本台帳に基づく30歳以上3,108人の内(平成14年11月 1 日現在),入院中などを除く2,870人を対象に同町における健康づくり計画策定のためのアンケート調査が実施された(実施人数:2,695人,有効回答率=93.9%)。その中から,受動喫煙の状況に関して,「家庭や職場などにおいて,この 1 週間に他人のたばこの煙を吸う機会がありましたか?」などの問から地域での受動喫煙の現状を把握した。さらに,同町における平成15年 4 月に実施した基本健康診査受診者(1,005人)に対し,受動喫煙に関する自記式アンケートと,現在非喫煙者841人に対して酵素免疫測定法による尿中コチニンの測定を実施した。なお,尿中コチニン値は尿中クレアチニン値で除し,ETS 曝露の客観的指標とした。
    成績 同町における30歳以上の現在喫煙者の割合は,男性44.5%,女性6.5%であった。一方,健診受診者のそれは男性32.4%,女性3.7%と住民全体の喫煙率よりも低かった。住民全体の調査から,現在非喫煙者の男性12.6%,女性22.5%が自宅や職場などにおいて ETS 曝露が「ほとんど毎日」と回答した。「時々あった」を加えると,男性44.7%,女性42.8%であった。また,健診受診者を対象にした調査において,いずれかの場所において 1 時間以上の ETS 曝露が「ほとんど毎日」,あるいは「時々あった」と回答した者は,現在非喫煙者の男性の21.4%,女性の29.1%であった。このような ETS 曝露の有無別の 2 群間における尿中コチニン・クレアチニン比は,男性では有意な違いを認めなかったが,女性では明らかに ETS 曝露「あり」の群で高値を示した。
    結論 地域住民における受動喫煙の現状を示した。とりわけ,女性の喫煙率は低いにもかかわらず,ETS 曝露の割合は男性と同等かそれ以上であった。女性の ETS 曝露の場所は多くが家庭であり,家庭での分煙の取り組みはこれからの重要な課題になると思われた。
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