日本公衆衛生雑誌
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原著
入院喫煙患者に対する退院後の電話による禁煙支援とその効果
蓮尾 聖子田中 英夫大島 明
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2004 年 51 巻 6 号 p. 403-412

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抄録

目的 入院を契機に禁煙を開始した喫煙歴のある患者に対し,退院後に電話による禁煙支援を行い,退院後の禁煙の継続にどの程度寄与するのかを評価する。
方法 大阪府立成人病センターに入院した時点で喫煙中,もしくは禁煙後31日以内の患者で研究への参加を承諾した120人を最小化法によって 2 群に割り付けた(承諾後割付による無作為 2 群比較対照試験)。入院中は両群ともにベッドサイドでの個別禁煙指導を実施し,介入群には退院後 7, 21, 42日目に,保健師が各 5 分程度の電話による禁煙支援を追加した。両群に対し退院後 3, 6, 12か月後に自記式質問票を自宅へ郵送し,各時点における喫煙状況を把握した。12か月後時点での禁煙申告者には,尿中のニコチン代謝産物の半定量により禁煙を確認した。退院時点で喫煙していた者,または退院後 1 年以内に死亡した者を除き,介入群57人,対照群49人を解析対象とした。退院後の電話による再喫煙防止効果は多重ロジスティック回帰分析で検討した。
結果 対象者の平均年齢は60歳,男性が87%を占めた。対象者のうち,がん患者は35%であった。両群における対象者の属性に有意差は認められなかった。退院 3 か月後時点での禁煙者の割合は,介入群83%,対照群76%と,有意差はみられなかったものの介入群でやや禁煙者の割合が高かった(P=0.38χ2 検定)。退院から 6 か月後の時点におけるそれは,介入群67%,対照群65%, 12か月後の時点では介入群56%,対照群51%と,両群で差を認めなかった。性,年齢,参加時喫煙状況,合併症の有無,家族数,ニコチン依存度,および退院後の禁煙に対する自己効力感を調整した,介入群の対照群に対する禁煙オッズ比は,3 か月後で1.46 (95%信頼区間:0.48-4.47),6 か月後で0.82 (95%信頼区間:0.31-2.17),12か月後で0.99 (95%信頼区間:0.40-2.45)となった。
結論 喫煙歴のある入院患者に行った今回の電話による禁煙支援は,退院後の禁煙の継続に寄与するには至らないと考えられた。退院後の再喫煙を防ぎ禁煙を継続させるためには,介入の時期や手段等について,さらに検討を要すると思われた。

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© 2004 日本公衆衛生学会
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