日本公衆衛生雑誌
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51 巻 , 6 号
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原著
  • 權 珍嬉, 鈴木 隆雄, 金 憲経, 尹 喜貞, 李 誠國
    2004 年 51 巻 6 号 p. 391-402
    発行日: 2004年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル フリー
    目的 韓国都市部の一地域の保健所が運営する住民健康増進プログラムに参加している65歳以上の高齢女性を対象に,栄養に関する正しい知識,態度および食習慣について栄養士による訪問栄養教育を実施し,高齢者の栄養状態の改善効果を検討することを目的とした。
    方法 韓国大邱広域市西区保健所が運営する住民健康増進センターを利用している65歳以上の地域在宅高齢女性183人を対象に本研究の事前調査を実施した。その結果,研究条件に適合する高齢女性80人(介入群40人,対照群40人)が選定され,介入群には 4 か月間(週 1 回計16回)の訪問栄養教育を実施し,対照群には何らの介入も行わなかった。介入群と対照群を対象として介入後調査を実施し訪問栄養教育の効果を評価した。
    結果 訪問栄養教育実施後,介入群では栄養知識,栄養態度および食習慣の得点が各々有意に改善された(P<0.01)。また食品摂取量も増加し,エネルギー,たんぱく質,カルシウム,鉄,リン,ナイアシン,ビタミン B1,ビタミン B2 の摂取量は介入群において対照群より有意に増加した(P<0.01)。さらに,食事の全般的な質を評価する平均栄養素適正度も介入群で有意に増加した(P<0.01)。しかし,介入後の身体計測値および生化学的栄養状態の変化には両群間に有意差がなかった。
    結論 地域高齢女性を対象とした訪問栄養教育は,栄養知識・栄養態度・食習慣と食品および栄養素摂取状況の改善に有意な影響を及ぼすことを確認した。訪問栄養教育を効率的に実施することにより高齢者の栄養状態が改善され,健康状態の維持・増進につながる可能性が示唆された。
  • 蓮尾 聖子, 田中 英夫, 大島 明
    2004 年 51 巻 6 号 p. 403-412
    発行日: 2004年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル フリー
    目的 入院を契機に禁煙を開始した喫煙歴のある患者に対し,退院後に電話による禁煙支援を行い,退院後の禁煙の継続にどの程度寄与するのかを評価する。
    方法 大阪府立成人病センターに入院した時点で喫煙中,もしくは禁煙後31日以内の患者で研究への参加を承諾した120人を最小化法によって 2 群に割り付けた(承諾後割付による無作為 2 群比較対照試験)。入院中は両群ともにベッドサイドでの個別禁煙指導を実施し,介入群には退院後 7, 21, 42日目に,保健師が各 5 分程度の電話による禁煙支援を追加した。両群に対し退院後 3, 6, 12か月後に自記式質問票を自宅へ郵送し,各時点における喫煙状況を把握した。12か月後時点での禁煙申告者には,尿中のニコチン代謝産物の半定量により禁煙を確認した。退院時点で喫煙していた者,または退院後 1 年以内に死亡した者を除き,介入群57人,対照群49人を解析対象とした。退院後の電話による再喫煙防止効果は多重ロジスティック回帰分析で検討した。
    結果 対象者の平均年齢は60歳,男性が87%を占めた。対象者のうち,がん患者は35%であった。両群における対象者の属性に有意差は認められなかった。退院 3 か月後時点での禁煙者の割合は,介入群83%,対照群76%と,有意差はみられなかったものの介入群でやや禁煙者の割合が高かった(P=0.38χ2 検定)。退院から 6 か月後の時点におけるそれは,介入群67%,対照群65%, 12か月後の時点では介入群56%,対照群51%と,両群で差を認めなかった。性,年齢,参加時喫煙状況,合併症の有無,家族数,ニコチン依存度,および退院後の禁煙に対する自己効力感を調整した,介入群の対照群に対する禁煙オッズ比は,3 か月後で1.46 (95%信頼区間:0.48-4.47),6 か月後で0.82 (95%信頼区間:0.31-2.17),12か月後で0.99 (95%信頼区間:0.40-2.45)となった。
    結論 喫煙歴のある入院患者に行った今回の電話による禁煙支援は,退院後の禁煙の継続に寄与するには至らないと考えられた。退院後の再喫煙を防ぎ禁煙を継続させるためには,介入の時期や手段等について,さらに検討を要すると思われた。
  • 松嵜 英士, 松下 裕子, 巩 玉秀, 美ノ谷 新子, 出野 慶子, 浅野 祐子, 宮本 圭, 村井 貞子, 梶山 祥子, 五島 瑳智子
    2004 年 51 巻 6 号 p. 413-423
    発行日: 2004年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル フリー
    目的 1978年以降の中国社会は,改革開放政策による急速な経済発展と国民の生活水準向上をもたらしてきたが,人口の高齢化,生活習慣病の増加,環境汚染などの新しい健康問題を引き起こし,地域格差も拡大している。このような状況下で,健康や医療に携わっている看護職者と同居する高齢者の健康問題を調査し,健康問題と生活習慣の実態を検討した。
    方法 中国23行政区各施設に勤務する看護職者と同居する65歳以上の高齢者を対象に治療中の疾患の状況,生活習慣を調査し,1,548人から有効回答を得た(有効回答率82.1%)。なお,回答は同居の看護職者が行った。
    結果 1. 治療中の疾病を有する数は,男性597人中457人(76.5%),女性951人中725人(76.2%)であった。男性では動脈硬化,脳血管疾患,心臓疾患等が75歳以上に多く,女性では動脈硬化,呼吸器疾患,眼疾患が75歳以上に多かった。
     2. 健康習慣指数(Health Practice Index: HPI)には,男女とも75歳以上(後期高齢者)と75歳未満(前期高齢者)に有意な差はなかったが,「間食をとる」は前者で有意に多かった。また,男性は女性に比べて,昼寝,運動など,良い生活習慣 8 項目中 5 項目を実行している者が多かった。女性の飲酒,喫煙習慣は男性より有意に少なかった。
     3. 男女とも疾患を有しない者が疾患を有する者より HPI が有意に高かった。なお,この傾向は75歳未満,75歳以上でも同じであった。
     4. 疾患の保有パターンによるクラスター分析の結果,調査した23行政区は 4 地区に分類され,疾患保有率の低い地区の HPI が疾患保有率の高い地区より有意に高かった。また,治療中の疾患が多い第IV群では,他群より HPI は低く,特に「運動習慣なし」が多かった。
    結論 疾患を有しない者の HPI が高いことから,適切な生活習慣が疾患発生を減じていることが示唆された。疾患保有パターンのクラスター分析により分けられた 4 地区には HPI,喫煙,運動習慣に有意な差があることが明らかにされた。
短報
  • 山田 ゆかり, 池上 直己
    2004 年 51 巻 6 号 p. 424-431
    発行日: 2004年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル フリー
    目的 在宅高齢者のアセスメントとケアプランの手法である Minimum Data Set-Home Care (MDS-HC)の予防版を開発すること。
    方法 ADL に障害はないが IADL に障害のある278人の在宅高齢者に対して,保健師が 3 か月に一度自宅を訪問し,オリジナルの MDS-HC を用いてアセスメントを実施した。3 回目の訪問におけるアセスメント表および訪問記録表(n=217)と,訪問 3 回目から 5 回目まで追跡可能であったアセスメント表(n=163)を分析の対象とした。オリジナルのアセスメント項目(247項目)から,アセスメント表の分析により問題状況の発生頻度およびその変化を示した者がいずれも10%以上あったアセスメント項目,および訪問記録表の分析により保健師が判断したニーズを選定するのに必要なアセスメント項目をそれぞれ選択し,予防版 MDS-HC アセスメント表を作成した。同アセスメント表の妥当性について,保健師が判断したニーズに対する敏感度と特異度を検証した。
    結果 オリジナルのアセスメント項目のうち,問題状況の発生および変化のみられた対象者の割合がともに10%以上であったのは53項目,およびこれらの項目に含まれなかったが保健師の判断したニーズを把握するために必要な36項目を加えると,予防版 MDS-HC アセスメント表の項目は89項目となり,オリジナル版の247項目の35.7%を構成した。予防版 MDS-HC における保健師の判断したニーズに対する敏感度は,オリジナル版の MDS-HC アセスメント表と比較して同等であるか向上した。
    結論 本研究で開発された予防版 MDS-HC は,オリジナル版と比較して項目数が 1/3 に減少して簡便となり,対象者のニーズを感度よく抽出することが可能であった。予防版 MDS-HC を用いることにより,体系的な予防訪問の実現を期待できる。
資料
  • 神尾 友佳, 藤本 眞一, 山本 覚子, 小窪 和博, 稲葉 静代, 藤原 奈緒子
    2004 年 51 巻 6 号 p. 432-444
    発行日: 2004年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル フリー
    目的 保健所の重要な任務として地域保健法の基本指針で明確に規定されている健康危機管理について,より良い権限付与のあり方を考察していくことを目的とした。
    方法 全国の保健所設置主体に対して,健康危機に関して定められている法律として,2 年前の先行研究により抽出された229の条項文について,各県市区の首長が保健所などの出先機関の長に条項の権限を「事務委任」,また,その権限を首長のまま,判断のみを出先機関の長などに任せる「専決」させているかを,調査した。それらの結果をもとに,各県市区における健康危機管理対応の権限のあり方を検討した。
    成績 大麻取締法,覚せい剤取締法などの条項については,「権限を首長のまま」が県市区の 6 割以上であった。一方,食品衛生法,医療法,感染症法などの条項については,「保健所長・統合組織の長委任」が県市区の 6 割以上であった。また,統合組織の長へ委任し直している県市区が,先行研究(群馬県のみ)よりも,8 市区(青森県,群馬県,神奈川県,富山県,兵庫県,福岡県,横浜市及び横須賀市)と,増えてきた。環境保全関係の権限などは,約 1 割の県市区が統合組織の長に委任し直しているが,食品衛生法などの保健所長にもともと委任されていた権限は,9 割以上は保健所長に委任されたままである。また,大麻取締法の「免許の取消し」など,多くの県市区が「権限を首長のまま」にしている条項については,約 9 割が出先機関へ専決されておらず,保健所長等に専決されているものは僅かに 1 割以下であった。
    結論 交通遮断のように,社会生活全般に影響を及ぼす特に重大な権限と考えられる権限でも,「出先機関への委任」を行っている県市区もあり,権限内容の重さを認識しているとは言い難い。そのような重要な権限は県市区の最終責任者たる首長が総合的に判断を下すべきである。一方,柔軟に対応するためにも,現場で処理した方が実際に迅速機敏に対処できる権限については,出先機関で対応すべきである。また,統合組織を作ったならば,出先機関に委任し直すべき権限は,統合組織の長へ委任し直すべきである。「出先機関での専決」は「出先機関への委任」と事実上の責任は変わらない。また,その意味が曖昧なため,とくに重大な権限でなければ,「出先機関での専決」を「委任」に改めるべきである。
  • 岡本 悦司
    2004 年 51 巻 6 号 p. 445-451
    発行日: 2004年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル フリー
     レセプトとカルテといった異なったデータを個人単位で連結(リンケージ)したり,複数の機関から個人情報を収集するがん登録のような疾病登録事業を,個人名を平文のままで行うのではなく暗号により連結可能匿名化して行う可能性を検討する。
     暗号化と解読の両方が必要な通信とは異なり,暗号化のみで足りる研究目的の連結(リンケージ)の場合,情報提供を受ける研究者が鍵を共有する必要はないので自治体や保険組合等のデータ保有者は簡単な暗号化により安全に研究者にデータ提供を行うことが可能である。
     Microsoft エクセル®を用いた人名暗号化の具体的な手法を紹介する。人名の漢字を JIS コード化し,そのコードを無作為に選んだアルファベット(大小52文字)で置換する。この数字とアルファベットの対応表が鍵であり,5.74×1016 通りの組み合わせがあることから鍵無しに解読は不可能である。これにより万一漏洩があってもプライバシー侵害が起こらない技術的担保ができ,公衆衛生研究が促進されよう。
     がん登録や脳卒中登録のような複数の機関から個人情報を収集し追跡する疾病登録事業においても公開鍵暗号を用いることにより連結可能匿名化された登録システムが可能になる。しかしながら,暗号化作業が複雑であること,登録機関からの問合わせが不可能であること,鍵を公開することにより人名と暗号との対応表を誰でも作れることから安全性は十分には保証されず,暗号のみに頼って疾病登録事業の連結可能匿名化はなおも困難である。
  • 逢見 憲一
    2004 年 51 巻 6 号 p. 452-460
    発行日: 2004年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル フリー
    目的 1899年以降の人口動態統計について,今後の分析の基礎とするため,各年代の報告書における背景や意図を把握することを目的とした。
    方法 厚生労働省図書館の所蔵する報告書を主に通覧し,作表の様式について変遷を観察・記述して分析を加えた。
    成績 1899年以降第二次世界大戦前の人口動態統計の作表の様式は,時期を経るにつれて変遷がみられた。その様式は,(1)明治期から大正初期,(2)大正中期,(3)大正後期から昭和初期,(4)昭和10年代,のものに大別された。
     また,明治から大正中期までの時期には,道府県に明確な序列がみられた。この序列は1923年に改められ,これ以降,道府県を地理的に鳥瞰する配列で統計が作表されるようになっていた。さらに,1919年には,総覧において「總數」と「内地總數」が表の冒頭に掲載されるようになっていた。
    結論 1899年以降の人口動態統計について,とくに第二次世界大戦前の報告書における様式には,時期とともに変遷がみられた。明治後期から大正期にかけて,道府県から「国家」へ,道府県民から「国民」への人口動態における視座が変化したことが示唆された。
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