日本公衆衛生雑誌
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原著
中華人民共和国の高齢者の健康 看護職者と同居する高齢者の治療中の疾患と生活習慣
松嵜 英士松下 裕子巩 玉秀美ノ谷 新子出野 慶子浅野 祐子宮本 圭村井 貞子梶山 祥子五島 瑳智子
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2004 年 51 巻 6 号 p. 413-423

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抄録

目的 1978年以降の中国社会は,改革開放政策による急速な経済発展と国民の生活水準向上をもたらしてきたが,人口の高齢化,生活習慣病の増加,環境汚染などの新しい健康問題を引き起こし,地域格差も拡大している。このような状況下で,健康や医療に携わっている看護職者と同居する高齢者の健康問題を調査し,健康問題と生活習慣の実態を検討した。
方法 中国23行政区各施設に勤務する看護職者と同居する65歳以上の高齢者を対象に治療中の疾患の状況,生活習慣を調査し,1,548人から有効回答を得た(有効回答率82.1%)。なお,回答は同居の看護職者が行った。
結果 1. 治療中の疾病を有する数は,男性597人中457人(76.5%),女性951人中725人(76.2%)であった。男性では動脈硬化,脳血管疾患,心臓疾患等が75歳以上に多く,女性では動脈硬化,呼吸器疾患,眼疾患が75歳以上に多かった。
 2. 健康習慣指数(Health Practice Index: HPI)には,男女とも75歳以上(後期高齢者)と75歳未満(前期高齢者)に有意な差はなかったが,「間食をとる」は前者で有意に多かった。また,男性は女性に比べて,昼寝,運動など,良い生活習慣 8 項目中 5 項目を実行している者が多かった。女性の飲酒,喫煙習慣は男性より有意に少なかった。
 3. 男女とも疾患を有しない者が疾患を有する者より HPI が有意に高かった。なお,この傾向は75歳未満,75歳以上でも同じであった。
 4. 疾患の保有パターンによるクラスター分析の結果,調査した23行政区は 4 地区に分類され,疾患保有率の低い地区の HPI が疾患保有率の高い地区より有意に高かった。また,治療中の疾患が多い第IV群では,他群より HPI は低く,特に「運動習慣なし」が多かった。
結論 疾患を有しない者の HPI が高いことから,適切な生活習慣が疾患発生を減じていることが示唆された。疾患保有パターンのクラスター分析により分けられた 4 地区には HPI,喫煙,運動習慣に有意な差があることが明らかにされた。

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© 2004 日本公衆衛生学会
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