抄録
目的 職域定期健康診断データを用いてメタボリック症候群の各リスク要因の集積の特徴を調べる。
方法 都内某事務系事業所の健康管理センターにおいて1991~1993年度の定期健康診断を受診して,その後 5 年間連続して定期健康診断を受診した40~59歳男性8,194人から以下の 2 つの対象集団を抽出した。(1)1996~1998年度のメタボリック症候群発症者148人を抽出してメタボリック症候群発症 5 年前までレトロスペクティブに追跡した。各リスク要因を継続して保有していた割合(継続保有率)を求めた。(2)1991~1993年度の 3 リスク要因保有者1,100人を抽出して 3 リスク要因保有 5 年後までプロスペクティブに追跡した。カプランマイヤー法により 3 リスク要因のパターンごとにメタボリック症候群非発症率曲線を求めて,ログランクテストにより各パターン間の有意差を検定した。比例ハザードモデルを用いてメタボリック症候群の発症に関する調整ハザード比と95%信頼区間を算出した。なお,メタボリック症候群の定義は①肥満(Body Mass Index 25 kg/m2 以上),②高血圧(収縮期血圧140 mmHg 以上または拡張期血圧90 mmHg 以上または降圧剤の服用),③糖尿病(空腹時血糖110 mg/dl 以上),④高脂血症(総コレステロール220 mg/dl 以上または中性脂肪150 mg/dl 以上)の 4 条件を満たす場合とした。
結果 メタボリック症候群発症者に関する解析において,メタボリック症候群発症前 5 年間の各リスク要因の継続保有率は肥満>高脂血症>高血圧>糖尿病の順であった。また,3 リスク要因保有者に関する解析において,メタボリック症候群発症率は肥満+高血圧+糖尿病群>肥満+糖尿病+高脂血症群>肥満+高血圧+高脂血症群>高血圧+糖尿病+高脂血症群の順であった。年齢と喫煙と飲酒と運動を調整したハザード比(95%信頼区間)は高血圧+糖尿病+高脂血症群を基準にして,肥満+高血圧+糖尿病群が4.4 (2.9~6.9),肥満+糖尿病+高脂血症群が3.2 (2.1~4.9),肥満+高血圧+高脂血症群が2.1 (1.4~3.0)であり,3 リスク要因のなかに肥満が含まれるパターンほど,また,糖尿病が含まれるパターンほどメタボリック症候群発症率が高かった。
結論 メタボリック症候群の発症にあたえる肥満の影響が注目され,3 リスク要因保有者のメタボリック症候群の発症において肥満の役割が大きいと考えられた。