目的 発作性上室性頻拍(PSVT)でカテーテル・アブレーション(CA)を受けた患者の生活状況,頻拍発作の自覚,治療前後の Quality of Life(QOL)とうつ状態の変化を調査し,患者の QOL の状況を明らかにする。
方法 1995年 2 月~1999年 1 月に PSVT にて CA を受けた全患者103人(Wolff-Parkinson-White(WPW)症候群86人,房室結節回帰性頻拍(AVNRT)27人)を対象として,2000年 6 月,自記式質問紙法により患者の状態,CA に対する患者評価,CA 前後の QOL と Self-rating depression scale(SDS)のアンケート調査を行なった。このうち21人は,住所不明等で返送され,調査可能だった者は82人であり,有効回答数は59人(有効回答率72.0%)である。
成績 分析対象者の平均年齢は50.5±15.8歳,疾患割合は,WPW 41人,AVNRT 18人,医療者による治療評価は根治率100%であった。
59人のうち,CA 後に頻拍発作自覚が無くなった者は47人(79.7%)であった。また,CA 前には59人全員が 2~4 週に 1 回通院していたが,CA 後に全く通院しなくてよくなった者は32人(54.2%),生活制限をしていない者は45人(76.3%)であった。患者評価では,59人(98.3%)が CA を肯定的に評価していた。
非特異的健康状態 QOL,社会的および主観的指標 QOL は,CA 前に比し CA 後に有意に QOL が改善したと考えている者が多く,その結果,QOL 得点は CA 後のほうが高かった(非特異的健康状態 QOL :
P<0.001,社会的および主観的指標 QOL :
P<0.05)。
SDS は,CA 前に比し CA 後に有意にうつ傾向が改善したと考えている者が多く,その結果,CA 後に減少した(
P<0.001)。
結論 1. CA 後に頻拍発作自覚は消失または減少,通院回数の減少,生活制限の緩和がみられた。
2. CA 前後で QOL(身体症状 QOL,社会的および主観的指標 QOL),うつ傾向は改善したと考えている者が多かった。
3. CA への患者評価では,肯定的に評価している患者が98.3%を占め,CA を受けた患者が CA 治療を受容していることが明らかとなった。
4. 医療関係者は,CA が PSVT の QOL とうつ状態を改善させることを認識して,患者の支援に務めることが重要である。
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