日本公衆衛生雑誌
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抑うつ症状とその関連要因についての検討 北海道内の一短期大学における調査から
小林 幸太小林 玲子久保 清香園田 智子森 満
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2005 年 52 巻 1 号 p. 55-65

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抄録

目的 近年日本ではうつ病,うつ状態,自殺などの増加が社会問題化しており,早急に予防的介入が必要とされるが,予防介入はおろか精神保健に関する実態報告さえも少ないのが現状である。本調査は,青年期集団においてストレスとその関連事象との関係を検討し,精神保健における予防介入の手がかりを見いだすために企画実行された。
方法 2003年10月に北海道の一短期大学の学生184人に対して質問紙による横断調査を行い,無効回答を除いた153人を解析対象とした(平均年齢19.9歳,女性141人)。性,年齢,精神科・心療内科通院歴,学校での問題行動,朝食摂取状況,喫煙状況,飲酒状況,部活動,趣味の活動,アルバイトの状況,ソーシャル・サポート,ストレス状況,抑うつ指標,認知方策指標,コーピング指標を測定項目とした。
成績 単変量ロジスティック回帰分析を用い抑うつ指標と各変数をオッズ比にて検討した結果,抑うつ症状は,認知傾向や学校でのストレスの自覚と統計学的に有意な関連があった。これらの要因は,多変量ロジスティック解析にて他の変数を調整しても有意なままであった。最もオッズ比の高かった変数は,認知傾向であった。
結論 本研究では一般健康人として,短大生を対象にしたストレスとその関連事象との関係を検討した。多変量ロジスティック解析にて抑うつ症状との関連がもっとも強かったのは認知方策であった。認知を改善する方法として,認知行動療法の概念を取り入れた予防教育が青年期の抑うつ症状に予防的に働く可能性があり,今後は介入ツールの開発も視野に入れて研究を進めていく必要があると考えられた。

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© 2005 日本公衆衛生学会
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