日本公衆衛生雑誌
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52 巻 , 1 号
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原著
  • 熊谷 法子, 森田 一三, 中垣 晴男, 外山 敦史, 小林 松美, 下里 美穂, 松久 勝彦, 渡辺 静男, 渡辺 剛
    2005 年 52 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 「80歳で自分の歯を20歯以上もとう」という8020運動を達成するためには生涯を通じて,口腔保健にとって好ましい生活習慣を維持することが大切である。愛知県の T 村では80歳で20歯以上自分の歯を保有することを一つの目標として,歯の喪失を防止するためのチェック票である,“歯の健康づくり得点”(通称「歯のさわやか得点」)を開発し,1999年(平成11年)より使用している。今回我々は,この歯の健康づくり得点が実際の住民の歯の喪失をどのように予測しているかを知るために,ベースラインから 3 年後まで T 村の住民の歯の喪失状況を追跡し分析評価した。
    方法 対象者は愛知県 T 村に居住の住民で毎年行われる住民健康診査(T 村人間ドック)に参加した者のうち,1999年 5 月に行われた歯科の健康診査に参加した住民716人である。1999年の歯の健康づくり得点と喪失歯数の関係について,オッズ比およびその95%信頼区間(CI)を用いて評価を行った。
    成績 ベースラインの1999年では一人あたりの保有歯数(平均±標準偏)は,23.7±6.2歯(男性23.0±6.8,女性24.4±5.5),歯の健康づくり得点は13.1±3.9点(男性12.8±4.0点,女性13.4±3.9点)であった。ベースラインの歯の健康づくり得点と追跡時点の喪失歯数のオッズ比より歯の健康づくり得点が平均値の13点では喪失歯の有無,5 点以下では多数歯の喪失の予測が可能であった。
     観察年数の増加に従って,喪失歯数と生活習慣の関係を示す有意なオッズ比が多くなった。女性より男性の方が有意な結果が得られる傾向にあった。
    結論 歯の健康づくり得点は喪失歯の予測に有用であり,歯の保有をするための住民の好ましい生活習慣の支援手段として有用であると示唆された。
  • 仁科 一江
    2005 年 52 巻 1 号 p. 16-25
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 近年,動脈硬化と炎症反応との関連が指摘され,炎症マーカーである白血球数や C 反応性蛋白(以下 CRP)などの高値が虚血性心疾患発症を予測する新しい危険因子として注目されている。また,一方で多くのコホート研究で ST-T 変化は虚血性心疾患の予測因子であることが指摘されている。本研究は地域住民の健康診査結果をもとに,べースラインの白血球数と新規の心電図 ST-T 異常所見の出現との関連を明らかにすることを目的として実施した追跡研究である。
    方法 大阪府 A 市において昭和60年度から63年度の間に基本健康診査を初めて受診した者において,心電図検査にて正常所見であった者のうち非喫煙,かつ正常血圧であった者2,485人(男性516人,女性1,969人)を対象とした。このうち,ベースラインからの脱落者516人を除いた1,969人(男性279人,女性1,690人)について,性別・白血球数区分別に 7 分割し,最小値群と最大値群を除いた,残り 5 群,1,414人(男性201人,女性1,213人)を分析対象者とした。
    結果 ベースラインデータでは,男女ともに白血球数の平均値,白血球数高値者の割合は,ST-T 異常出現群では ST-T 正常継続群よりも高い傾向にあり,男性では有意差を認めた。
     ST-T 異常所見の出現に関する白血球数高値群の低値群に対する相対危険度は,男性総数では年齢・飲酒習慣調整後では4.72,多変量調整後では7.16で,女性総数ではそれぞれ1.47,1.50であった。
     男女各々について白血球数区分別にみると ST-T 異常所見の出現率(人年法による)は,男性では,白血球数が高い群ほど ST-T 異常所見の出現率が増加する傾向を認め,最高値群では33.3対1,000人年であった。女性では ST-T 異常所見の出現率は白血球数区分別の各群の間に,顕著な差はなく,男性にみられた傾向は認められなかった。白血球数区分別各群の最低値群に対する ST-T 異常所見の出現の相対危険度は,男性では白血球数が高い群ほど増加し,高値群,最高値群では年齢・飲酒習慣調整後6.57,8.85,多変量調整後では10.16,10.74で,ともに最低値群に対して有意差が認められた。白血球数区分別にみた相対危険度の検定についても,年齢・飲酒調整後,多変量調整後ともに,有意であった。女性では,最高値群の相対危険度はそれぞれ1.26,1.27で最低値群に対して有意差はなかった。また傾向性についても,ともに有意でなかった。
    結論 健康診査受診者の追跡調査の結果,ベースライン調査時の白血球数と心電図 ST-T 異常所見の新たな出現との間に有意な関連が認められ,その関連は男性において顕著であった。
公衆衛生活動報告
  • 金城 芳秀
    2005 年 52 巻 1 号 p. 26-33
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 ケースメソッド研修において,公衆衛生看護活動として「家庭訪問」を批判的に考える。
    方法 2002年より,“12番目の妊娠”をケースメソッド教材として開発してきた。このケースストリーに含まれていたジレンマは,ある保健師が“夫婦の問題”に介入すべきかどうかであった。2002年 7 月から2003年 2 月までに,2 つの研修でケースティーチングを実施した。最初の研修の参加者は,わが国の保健職者18人(保健師13人,課長職の上司 5 人),2 番目はカンボジアの保健職者 9 人(助産師 8 人,医師 1 人)が対象であった。
    結果 両研修の参加者はケースから得られた問題を分析して意思決定を行った。それらの意思決定は有益であり,それぞれ異なる視点となった。わが国の保健師らは他の保健職者と協同で介入することを支持した。一方,カンボジアの助産師らは自ら家族計画を積極的に実施する接近法を選択した。両研修での討議において,この「12番目の妊娠」は以下の 3 点を満足した:(1)参加者はケースの中の情報を用いて問題に取り組んだ;(2)潜在的な解決策を評価するために,参加者は分析的に考えた;および(3)参加者が分析を行う上で十分な情報がケースに含まれていた。
    結論 両研修は,介入の道具として「家庭訪問」を批判的に考えることを促し,公衆衛生看護活動に必要な技能を考える上でもよい機会を提供した。
資料
  • 坂野 純子, 矢嶋 裕樹
    2005 年 52 巻 1 号 p. 34-45
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,Antonovsky(1987)によって開発された SOC スケール13項目版の構成概念妥当性をその因子構造の観点から検討し,加えて,SOC スケールの下位因子の臨床的有用性を抑うつとの関連性において吟味することを目的とした。
    方法 分析対象は,都内の A,B 大学および,中国地方の C 大学に在籍する大学生1,110人とした。SOC スケールの構成概念妥当性は探索的因子分析ならびに確認的因子分析を用いて検討した。また,SOC スケールの下位因子と抑うつとの関連性は構造方程式モデリングを用いて検討した。
    結果 探索的因子分析の結果,2 つの解釈可能な因子(「把握処理可能感」「有意味感」)から構成される 2 因子解が最適な解であると判断された。次いで,確認的因子分析の結果,前述の2因子から構成した SOC スケールの二次因子構造モデルがおおむねデータに適合することが示された(χ2 値=327.065, df=64, GFI=0.957, CFI=0.872, RMSEA=0.061)。さらに,構造方程式モデリングの結果,「有意味感」は「把握処理可能感」よりも「抑うつ」に対して高い影響力を有していることが示された。
    結論 Antonovsky の 3 因子仮説は支持されなかったが,今後,「処理可能感」と「把握可能感」の弁別可能性について,慎重に検討していく必要性があろう。なお,得られた 2 因子(「有意味感」と「把握処理可能感」)は,「抑うつ」に対してそれぞれ異なる影響力を有しており,これら 2 因子に着目することによって有益な臨床学的情報が得られる可能性が示唆された。
  • 大井 照, 佐々木 昭子, 竹島 正, 南 龍一, 高岡 道雄, 石下 恭子, 角田 正史, 上野 文彌
    2005 年 52 巻 1 号 p. 46-54
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 平成11年精神保健福祉法の改正により,保健所の地域精神保健における役割は変化している。この研究ではすでに多くの精神保健福祉業務委譲がなされている市区保健所における法施行直前の実態調査を行い,今後市区保健所での精神保健福祉業務を一層推進するためと,市町村への円滑な業務委譲を支援する上での参考資料を得る事を目的とした。
    方法 平成13年10月に指定都市・中核市・政令市・東京都特別区の81か所の保健所に対し精神保健福祉に関する質問紙による調査を郵送法にて実施した。
    成績 全体で86.4%の回収率を得た。市区保健所が保健と福祉の統合部門に属している割合は全体で57.1%だった。中核市は統合部門に属している割合が78.6%と高く統合が進んでいる一方で,指定都市は35.3%にとどまった。社会復帰施設と支援等については設置主体となっている保健所は 1 割に満たず,また補助金交付としては小規模作業所への交付が最多であった。特別区では生活訓練施設(援護寮)への支援が13.3%と低く,社会復帰施設が存在するのも60%と少なかった。居宅生活支援事業は全体の70.0%に実施され,その内社会適応訓練事業は「実施なし」が特別区で53.3%と他の保健所類型に比べ高い。社会復帰施設入所は市区保健所全体で「利用なし」が28.6%,相談・助言「なし」が37.1%であった。ケアマネージャー養成講座研修の受講は,指定都市,中核市,政令市で「受講者あり」の割合が高く,特別区で低かった。社会適応訓練事業を実施している保健所でケアマネージャー養成講座研修「受講者あり」が85.5%と,事業を実施していない保健所の46.2%に比べ有意に高かった。障害者手帳や医療費申請受理時に相談面接をしている割合は特別区が希望者のみとしたため40.0%と低かったが,他の類型では70%以上が実施していた。申請窓口は統合部門がほとんどであった。窓口での問題は中核市の半数が「あり」であったが,他では少なかった。法34条の移送制度について制度の実施は指定都市,特別区で70%を超え,中核市と政令市では低かった。移送の相談は全体で28.6%あり,移送制度があるところでは実際の移送が34.2%で実施されていた。精神保健福祉協議会は指定都市,特別区でほぼ設置されていたが,中核市は21.4%にとどまり,政令市では設置ありが 1 市のみで,検討もしていない保健所が多かった。障害者計画は多くの市区で策定されており,精神保健福祉が盛りこまれていた。法改正による変化では福祉施策面で前進と多くの保健所が回答した。
    結論 精神保健業務委譲は,市区保健所においてはすでに実施されているところが多いが,サービスが十分でないという懸念があり,法改正を機に充実が図れるかが課題であった。今回の調査では市区保健所間の格差がみられ夫々の市区保健所が都市規模に起因している等の課題を抱えていることが明らかになった。また新たに加わった法34条の移送制度について,実施している割合が指定都市と特別区は70%を超えたが,中核市と政令市は低い割合を示し,制度が整備されていないことが示唆された。
  • 小林 幸太, 小林 玲子, 久保 清香, 園田 智子, 森 満
    2005 年 52 巻 1 号 p. 55-65
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 近年日本ではうつ病,うつ状態,自殺などの増加が社会問題化しており,早急に予防的介入が必要とされるが,予防介入はおろか精神保健に関する実態報告さえも少ないのが現状である。本調査は,青年期集団においてストレスとその関連事象との関係を検討し,精神保健における予防介入の手がかりを見いだすために企画実行された。
    方法 2003年10月に北海道の一短期大学の学生184人に対して質問紙による横断調査を行い,無効回答を除いた153人を解析対象とした(平均年齢19.9歳,女性141人)。性,年齢,精神科・心療内科通院歴,学校での問題行動,朝食摂取状況,喫煙状況,飲酒状況,部活動,趣味の活動,アルバイトの状況,ソーシャル・サポート,ストレス状況,抑うつ指標,認知方策指標,コーピング指標を測定項目とした。
    成績 単変量ロジスティック回帰分析を用い抑うつ指標と各変数をオッズ比にて検討した結果,抑うつ症状は,認知傾向や学校でのストレスの自覚と統計学的に有意な関連があった。これらの要因は,多変量ロジスティック解析にて他の変数を調整しても有意なままであった。最もオッズ比の高かった変数は,認知傾向であった。
    結論 本研究では一般健康人として,短大生を対象にしたストレスとその関連事象との関係を検討した。多変量ロジスティック解析にて抑うつ症状との関連がもっとも強かったのは認知方策であった。認知を改善する方法として,認知行動療法の概念を取り入れた予防教育が青年期の抑うつ症状に予防的に働く可能性があり,今後は介入ツールの開発も視野に入れて研究を進めていく必要があると考えられた。
  • 田中 司朗, 山口 拓洋, 大橋 靖雄
    2005 年 52 巻 1 号 p. 66-75
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 看護系教育課程を持つ大学において疫学・生物統計学の授業を担当している教官の背景,講義・実習内容など疫学・生物統計学教育の実態と,教官の感じている問題点を調査し,教官の背景と,講義内容・感じている問題点に関連があるか検討した。
    対象と方法 看護系教育課程を持つ大学における疫学・生物統計学教育の実態について,国公立大学62校および私立大学27校(計89校)の疫学・生物統計学の授業を担当している教官を対象に自記式調査票を用いて調査を行い,対象校89校のうち回答の得られた50校61通を本研究の対象とした。
    結果 疫学・生物統計学を専門としている教官は20%と少なく,疫学・生物統計学に関係した学会の所属割合も低かった。また,教官の感じている問題点として,良い教科書・実習用の教材・問題集がなく,とくに看護に関する実例を挙げた教科書が望まれている事,教官やチューターの人数が不足している事,学生の意欲,数学やパソコン・情報処理の能力が足りない事が挙げられた。講義内容については「統計における基本概念」や「統計解析」のうちの基本的な分野に関しては90%前後の,「疫学における基本概念」や「医学・疫学研究デザイン」については70%前後の大学で講義されている事などがわかった。
    結論 疫学・生物統計学の授業を担当している教官の専門分野や所属学会などの背景,感じている問題点,講義・実習・卒業論文指導の内容などが明らかになった。疫学・生物統計学を専門としている教官が講義している大学は少なく,工学部・薬学部・理学部数学科などの他学部所属の教官に頼っている事や教科書に対する要望が強い事,学生に学ぶ意欲や数学とパソコン・情報処理の能力が足りないと感じている教官が多い事が示唆された。これらは看護教育における疫学・統計学教育のあり方を考える上で貴重な資料になりうると考えられる。
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