日本公衆衛生雑誌
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総説
高齢者における主観的健康感の有用性に関する研究 日本と中国における研究を中心に
艾 斌星 旦二
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2005 年 52 巻 10 号 p. 841-852

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抄録

 本稿は,日本と中国の高齢者における主観的健康感を健康指標として評価することを目的とし,1)指標の信頼性,2)指標の妥当性,3)指標の実用性から先行研究をレビューし,これまでの研究状況と今後の課題を提示する。
 レビューの結果,以下の 4 点が示された。1)主観的健康感の選択肢としては,「ふつう」や「あまり健康といえないが病気ではない」という中間点の選択肢を含まない「偶数均衡尺度」は,中間点を含む「奇数均衡尺度」に比べて信頼性が日中ともに高いことや,分布が偏る可能性がある。2)主観的健康感の基準妥当性は,疾病に対する併存妥当性や生命予後に対する予測妥当性が日中ともに高い。3)主観的健康感の構成妥当性は,主観的幸福感,生活満足度,抑うつなど心理的・精神的指標と収束妥当性が日中ともに認められている。さらに日本においては社会関係指標,中国においては家族関係指標との関連が高い。4)主観的健康感は簡便な健康評価指標としての実用性が高いことが日中ともに示唆された。今後の課題は,同様な方法,同様な時期,同様な内容の調査により,日本と中国における高齢者の主観的健康感の構造に関する比較研究を行うとともに,主観的健康感を向上させる介入比較研究が求められる。

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© 2005 日本公衆衛生学会
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