日本公衆衛生雑誌
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原著
地域高齢者の日常・社会生活の状況と物忘れ自覚症状との関連性 認知症のリスクスクリーニングとして
寺岡 佐和小西 美智子鎌田 ケイ子
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2005 年 52 巻 10 号 p. 853-864

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抄録
目的 認知症の発症を誘発する要因としては,老化に伴う生理的変化による脳の機能低下の他に,社会的交流の減少,生き甲斐の喪失,閉じこもり的な生活による活性状態の低下等がもたらす脳の機能低下があげられる。認知症発症予防のアプローチとしては,とくに廃用性認知症の予防を目指した地域ケアプログラムが考えられる。そこで,その対象者に関する簡便なリスクスクリーニング方法について示唆を得るために,日常・社会生活の活性状態の低下と認知機能低下としての物忘れ自覚症状との関連性を明らかにする。
方法 山梨県の 3 市町村に居住する65歳以上の地域高齢者6,486人を対象に,日常・社会生活の活性状態に関する20項目と,物忘れ自覚症状に関する21項目からなる調査表を作成し,郵送法による悉皆調査を行った。物忘れ自覚症状の項目についてクラスター分析を行い,得られたクラスターと日常・社会生活の活性状態との関連性について,Mann-Whitney 検定を行った。
結果 回収された5,556人(回収率85.7%)のうち,記入もれがない3,067人(有効回答率55.2%)を分析の対象とした。21項目の物忘れ自覚症状について,該当なしは600人(19.6%)であった。物忘れ自覚症状が 1 つ以上ある2,467人の「物忘れ自覚症状」21項目についてクラスター分析を行った結果,2 項目からなる「よくある物忘れ症状」,4 項目からなる「健忘的症状」,2 項目からなる「感情的反応」,8 項目からなる「生活意欲の低下」,5 項目からなる「日常生活の困難性」の 5 つのクラスターが確認された。5 つのクラスターの組み合わせは31種類あり,最も多かったのは「よくある物忘れ症状」に該当する者658人(21.5%)であった。物忘れ自覚症状を有する群と,なし群との日常・社会生活の状況についてみると,クラスターの「生活意欲の低下」を有する群は,なし群に比べ,日常・社会生活の活性状態に関する多くの項目において有意に差がみられた。
結論 物忘れ自覚症状の中でも「生活意欲の低下」に該当する項目と日常・社会生活の活性状態に関する項目との間に関連がみられた。このことから地域における認知症の二次予防を目指す地域ケアプログラム適用者の選定に際しては,地域高齢者の物忘れ自覚症状としての「生活意欲の低下」,知的活動や社会活動頻度等の日常・社会生活の活性状態に関する状況を把握することにより,認知症のリスクスクリーニングに活用できる可能性が考えられる。
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© 2005 日本公衆衛生学会
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