抄録
目的 本研究は,らい予防法廃止以前に,ハンセン病療養所から社会復帰した経験をもち,現在は療養所で生活しているハンセン病回復者が,社会復帰時の生活をどのように認識しているのかについて明らかにすることを目的とした。
方法 現在,国立療養所 A 園に入所しており,ADL が比較的良好なハンセン病回復者で,社会復帰経験を有する者を対象とし,13人から面接への協力が得られた。半構造化面接で語られたインタビューデータを,「社会生活においてハンセン病が影響を及ぼしていた場面」に焦点を当ててカテゴリー化した。
結果および考察 社会復帰時の生活において,ハンセン病が影響を及ぼしていた場面のカテゴリーとして,「体調管理」,「再発不安・病気の不安」,「医療」,「社会生活の中でのハンセン病との関わり方」,「他者との関係性」,「仕事」の 6 つが抽出された。ハンセン病の影響の及ぼし方として,『(病気が)さわぐ〈再発する〉』と『(病気を)かくす』という 2 つの要素が抽出された。「さわぐ」は,病気に対する不安をもち,体調管理に気を使うという行動につながっていた。「かくす」は,社会生活の中でのハンセン病との関わり方や,他者との関係性に影響を及ぼしていた。また,医療には,「さわぐ」ことのないように通院や服薬を行うという側面と,他の病気で診察を受ける際にハンセン病が発覚しないよう「かくす」という側面の両方がみられた。同時に,「かくす」ために仕事で無理をすることが「さわぐ」につながっており,「さわぐ」と「かくす」の悪循環がみられた。対象者全員が,当時の経験を『良かった』と振り返っており,その理由は,困難を伴いながらも社会生活を続けられたという達成感や充実感であった。
結論 本研究の対象者は,社会復帰をした経験を「良かった」と振り返っていた。社会生活に大きく影響を与えた要因として,病気が「さわぐ」と病気を「かくす」の 2 つの要素が抽出され,ハンセン病のようなスティグマを伴う病を患った者が社会生活を営むには,これらにかかわる困難を軽減することが必要と考えられた。