日本公衆衛生雑誌
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診療報酬上の精神科包括病棟の取得動向に関する全国調査
濱野 強宮本 有紀伊藤 弘人
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2005 年 52 巻 2 号 p. 169-175

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抄録

目的 精神科入院医療の急性期化の進展を明らかにすることを目的として,診療報酬上の精神科包括病棟の取得動向について全国調査を実施した。
方法 調査対象は,社会保険事務局(47局)と都道府県庁(47庁)である。前者には診療報酬上の精神科救急病棟,精神科急性期治療病棟,児童・思春期精神科入院医療管理加算病棟(以下,3 つの病棟を「精神科急性期・救急病棟」とする),精神療養病棟を有する病院を,後者には老人性痴呆疾患治療病棟,重度痴呆患者入院治療料病棟(以下,両病棟を「老人性痴呆疾患治療病棟」とする),老人性痴呆疾患療養病棟を有する病院を列挙し,調査内容について記入することを依頼した(回収率100%)。調査内容は,診療報酬上の精神科包括病棟の届出を行っている医療機関名,病床数,算定開始年月日および辞退年月日である。在院日数に制限がある精神科急性期・救急病棟,老人性痴呆疾患治療病棟を「急性期型病棟」,在院日数に制限がない精神療養病棟,老人性痴呆疾患療養病棟を「長期療養型病棟」に分類し,各病棟の病床数(2003年 9 月現在)ならびに病床増加数について分析を行った。
結果 1) 精神科急性期・救急病棟は6,752床であり,毎月81.7床ずつ増加していた。老人性痴呆疾患治療病棟は11,761床であり,毎月102.5床ずつ増加していた。ただし,各病棟は都道府県ごとで整備状況に地域差がみられた。
 2) 精神療養病棟は76,155床であり,2001年 6 月以前は毎月779.1床ずつ,同月以降は毎月286.4床ずつ増加していた。老人性痴呆疾患療養病棟は17,289床であり,毎月211.8床ずつ増加していた。
 3) 急性期型病棟の病床増加数は長期療養型病棟に比べて少ないことが示された。
結論 診療報酬上では,急性期型病棟の病床は毎月増加していることが明らかとなった。今後は,都道府県による整備状況の差や長期療養型病棟の増加とのバランスを考慮した上で,急性期型病棟を整備していく必要がある。

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