日本公衆衛生雑誌
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原著
抗癌剤取扱い看護師の職業性曝露に関する認識と安全行動
石井 範子嶽石 美和子佐々木 真紀子村田 勝敬
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2005 年 52 巻 8 号 p. 727-735

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抄録

目的 抗癌剤を取扱う看護師が職業性曝露による健康影響を認知しているか,またその防護行動をとっているのか実態を把握し,これらの関連を検討した。
方法 全国の大学病院107施設,癌専門病院13施設,300床以上 5 診療科以上を有する総合病院193施設の合計313施設を抽出し,各施設で抗癌剤を 1 年以上取扱っている 3 人の看護師,計939人を対象とした。抗癌剤の職業性曝露に関する認識,安全行動,関心を質問紙調査で郵送法により実施した。女性看護師571人の回答を集計し,関連性を χ2 検定により分析した。
結果 回答者の約40%が抗癌剤の職業性曝露による危険性を知らなかった。抗癌剤の準備場所は88%が病棟であり,与薬に関する一連の作業は看護師が最も高率に行っていた(55~88%)。安全行動については防護策の実施が39%,作業環境の考慮15%,排泄物取扱い時の防護 7 %であった。抗癌剤の職業性曝露による現在の健康影響について82%が関心を持っていたが,将来の健康影響および社会問題化は25%前後が可能性ありと回答した。また,95%の看護師が系統的な教育が必要と回答した。抗癌剤の職業性曝露による危険性を知っている看護師が安全行動をとっている率は有意に高かった。抗癌剤取扱いに関するガイドラインがあると回答したのは10%であった。
結論 抽出バイアスのため結果が過大評価されている可能性はあるが,抗癌剤を取扱うことに伴う危険性を知っている看護師は 6 割いた。しかし,抗癌剤の取扱いに特別の注意を払っている看護師は少数であるので,曝露防護に関する看護教育・訓練が必要と考えられた。

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© 2005 日本公衆衛生学会
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