日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
52 巻 , 8 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 岸田 研作, 谷垣 靜子
    2005 年 52 巻 8 号 p. 703-714
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 特別養護老人ホーム(以下,特養)における身体拘束を受ける入居者の数と施設の特性との関連を明らかにすること。
    方法 対象は,2002年度に岡山県下で運営していたすべての特養,103施設,入居者総数6,829人である。データは,2002年10月に福祉オンブズおかやまが県下の特養に対して行ったアンケート調査(郵送自記式)と同年度の行政監査資料を併せたもので,施設単位の集団データである。調査では身体拘束の定義は示されておらず,拘束の有無は個々の施設が判断している。解析は,重回帰分析を行った。被説明事象は,身体拘束を受ける者が身体拘束を受ける可能性のある者に占める割合 (以下,身体拘束者数の割合),独立変数は施設の特性である。推定の精度をあげるためには,各施設の入居者から拘束対象となりうる母集団を出来る限り正確に絞り込む必要がある。そこで,身体拘束を受ける可能性がある者は重度痴呆老人(痴呆老人の日常生活自立度でIV以上と定義)であると仮定した。重度痴呆老人をIII以上とした場合についても解析を行った。
    成績 必要な変数に欠損値がなく解析の対象となったのは,72施設,1,700人の重度痴呆老人であった。74%の施設で少なくとも 1 人の入居者が身体拘束を受けていた。身体拘束者数の割合の平均は24.2%であった。身体拘束者数の割合が低いことと,手厚い人員配置,定期的なケアカンファレンス,ユニットケアの実施が,有意に関連していた。重度痴呆老人の定義をIII以上としても重回帰分析の結果はほとんど変わらなかった。
    結論 身体拘束者数の割合が低いことと,手厚い人員配置,定期的なケアカンファレンス,ユニットケアの実施が,有意に関連していた。
  • 由良 晶子, 伊木 雅之, 清水 忠彦
    2005 年 52 巻 8 号 p. 715-726
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 新築または改築された小学校において,室内空気汚染化学物質の濃度測定と工事前後の児童の自覚症状調査を行い,学校教室内の空気汚染の実態とその健康影響を明らかにし,対策の立案に資する。
    方法 大阪府内 4 小学校の2001年夏期に新築された特別教室(コンピュータ教室等,普通教室以外の教室)と改築された普通教室において,増改築工事直後,1 か月後,3 か月後,10か月後,22か月後に,ホルムアルデヒドおよび揮発性有機化合物(VOC)3 物質(トルエン,キシレン,エチルベンゼン)の室内空気中濃度を吸引法と拡散法とで測定した。また,改築された普通教室を使用していた児童に対し,改築前と改築後の教室を使用してから約 1 か月経過した時点とに,シックハウス症候群様の自覚症状のアンケート調査を行った。
    結果 新築されたコンピュータ教室では,ホルムアルデヒドが工事直後よりもコンピュータや備品が搬入された 1 か月後の方に高く検出された。また,新築から10か月後と22か月後の夏期にも指針値を超えるホルムアルデヒドが検出された。改築された普通教室では,ホルムアルデヒドは未改築教室と同レベルであったが,VOC 類は工事直後に高く検出され,トルエンは指針値を超えた教室が多かった。鉄筋コンクリート造り 4 階建て校舎では 1・2 階より 3・4 階の方が,3 階建て校舎では 2 階より 3 階の教室の方が,室内空気汚染が高い傾向にあった。改築された普通教室の児童の自覚症状調査では,改築前に比べ改築後にシックハウス様症状の有訴率が高まる傾向がみられた。しかし,症状を一つ以上訴えた有症者の実数はほとんど変化しておらず,有症者一人当たりの症状数が高学年男子では有意に増加していた。
    結論 新築または改築された小学校において,一部の教室で室内濃度指針値を超える化学物質が検出された。工事後一定期間の開放換気や,コンピュータ教室など使用頻度の少ない特別教室の積極的な換気対策等が必要と考えられた。
  • 石井 範子, 嶽石 美和子, 佐々木 真紀子, 村田 勝敬
    2005 年 52 巻 8 号 p. 727-735
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 抗癌剤を取扱う看護師が職業性曝露による健康影響を認知しているか,またその防護行動をとっているのか実態を把握し,これらの関連を検討した。
    方法 全国の大学病院107施設,癌専門病院13施設,300床以上 5 診療科以上を有する総合病院193施設の合計313施設を抽出し,各施設で抗癌剤を 1 年以上取扱っている 3 人の看護師,計939人を対象とした。抗癌剤の職業性曝露に関する認識,安全行動,関心を質問紙調査で郵送法により実施した。女性看護師571人の回答を集計し,関連性を χ2 検定により分析した。
    結果 回答者の約40%が抗癌剤の職業性曝露による危険性を知らなかった。抗癌剤の準備場所は88%が病棟であり,与薬に関する一連の作業は看護師が最も高率に行っていた(55~88%)。安全行動については防護策の実施が39%,作業環境の考慮15%,排泄物取扱い時の防護 7 %であった。抗癌剤の職業性曝露による現在の健康影響について82%が関心を持っていたが,将来の健康影響および社会問題化は25%前後が可能性ありと回答した。また,95%の看護師が系統的な教育が必要と回答した。抗癌剤の職業性曝露による危険性を知っている看護師が安全行動をとっている率は有意に高かった。抗癌剤取扱いに関するガイドラインがあると回答したのは10%であった。
    結論 抽出バイアスのため結果が過大評価されている可能性はあるが,抗癌剤を取扱うことに伴う危険性を知っている看護師は 6 割いた。しかし,抗癌剤の取扱いに特別の注意を払っている看護師は少数であるので,曝露防護に関する看護教育・訓練が必要と考えられた。
公衆衛生活動報告
  • 大畠 律子, 中嶋 洋
    2005 年 52 巻 8 号 p. 736-745
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 結核対策に分子疫学的手法のひとつである RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism 制限酵素断片長多型)解析を用い,感染源・感染経路の究明や二次感染予防などに役立つ指標を得ること。
    方法 平成12~15年度までの 4 年間に岡山県内の医療機関で新登録患者から分離された結核菌を収集し,患者の年齢や居住地区等の疫学的背景が明らかな474株を対象として RFLP 解析を実施した。RFLP パターンのバンド数の分布から結核蔓延状況を解析し,クラスター解析から地域の流行株を調べた。感染様式を推測するため,RFLP パターンの年次推移や患者年齢層毎の違いおよび地域別の違いを調べた。集積された RFLP 解析結果は,菌株情報と併せてデータベース化し,結核感染事例発生時に感染源および感染経路を究明する他,モニタリングにより集団感染や散発事例の潜在的なリンクを発見するため用いた。
    結果 474株の RFLP パターンから,県内の結核状況が過去の高蔓延時代を強く反映していることが判った。パターンが100%一致したクラスター37組110株中,患者間に接点が認められたのは20%であり,おもに60歳以下であった。RFLP パターンの類似性による分類では,3 つの流行株グループが認められ,約40%がこれらに属した。RFLP パターン分布では,年次推移・患者年齢層毎および地域別に大きな相違はみられなかった。これらのことから,県内の結核菌の大部分は,過去の株が高齢者の再燃等で広い年齢層に広範囲に感染して受け継がれて来たと推測された。したがって,高齢者の発病防止が岡山県の結核対策上重要と思われた。RFLP データベースの活用では,事例の感染源および汚染源の究明において疫学調査結果を支持する科学的根拠となり有用であったが,集団感染や散発事例の潜在的なリンクの発見はできなかった。
    結論 RFLP 解析により,結核蔓延状況や流行株の存在等,結核対策に役立つ基礎データが得られた。また,事例の感染源・汚染源究明においては,従来の疫学調査結果を科学的に支持する事ができた。データベースからの集団感染や散発事例の潜在的なリンクの発見はできなかったが,今後,疫学調査の強化と効率的な調査の継続により発見が可能となり,結核対策に貢献できると思われた。
資料
  • 平野 かよ子, 池田 信子, 金川 克子, 潮見 重毅, 鈴木 晃, 平山 朝子, 古谷 章恵, 山崎 京子, 安村 誠司
    2005 年 52 巻 8 号 p. 746-755
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 4 年制の看護系大学で養成される保健師が急増する等保健師の養成に変化がみられるため,看護系大学,短大専攻科,専修学校の学校群別の保健師教育の現状と,学生の公衆衛生や保健師に関する認識を明らかにし,今後の保健師養成のあり方の検討に資することを目的とした。
    方法 教員に対しては保健師の資格を得るため科目と総時間に占める割合,公衆衛生や地域アセスメントの教授方法,保健師活動の認識等について,学生に対しては保健師を希望するきっかけ,公衆衛生の学習,公衆衛生や保健師活動の認識,保健師等のイメージ等について,郵送による自記式アンケート調査を行った。
    成績 科目数とその占める時間割合,演習時間数と実習時間数,教員数については学校群ごとに差があった。学校群ごとの学生についての差は,年齢や保健師の活動方法の認識,保健師についてのイメージにみられ,公衆衛生についての概念的な理解には差はみられなかった。
    結語 公衆衛生や保健師の活動についての学生の理解は学生の年齢や演習・実習等の体験的な学習時間数と関連すると考えられ,看護系大学での教育方法や大学院課程での養成の可能性等について検討することの必要性が明らかにされた。
feedback
Top