日本公衆衛生雑誌
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原著
妊娠期におけるドメスティック・バイオレンス
片岡 弥恵子八重 ゆかり江藤 宏美堀内 成子
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2005 年 52 巻 9 号 p. 785-795

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抄録

目的 DV の程度を測定する尺度である日本語版 ISA を用いて,妊娠期女性の DV 被害割合を明らかにし,DV のリスクファクターとして背景因子との関係および精神的な健康への影響を探索する。
方法 都心部の 1 か所の総合病院の産婦人科に通院する妊婦に対し,2003年 2 月から 5 月継続的に研究協力依頼を行った。研究依頼時(妊娠14週位)に GHQ30,自尊感情尺度,背景調査用紙,妊娠35週以降に妊娠中の状態を反映させるために DV の程度を測定する日本語版 ISA を実施した。
成績 279人から有効回答が得られた。日本語版 ISA により,妊婦279人中15人(5.4%)が DV 陽性と判定された。日本語版 ISA の下位尺度である身体的暴力は 9 人(3.2%),非身体的暴力は12人(4.3%)であった。DV のリスクファクターとしては,経産婦であること(OR=3.9),過去の身体的暴力(OR=9.1)の 2 点が明らかになった。また DV の精神的な健康に及ぼす影響については,一般的疾患傾向,睡眠障害,不安,うつ傾向,自尊感情との関連が認められた。なかでもうつ傾向は,DV 陽性の妊婦に約12倍多い(OR=11.5)という結果であった。
結論 DV は妊婦の約 5%,つまり20人に 1 人の割合であり,決して稀なことではないことがわかった。女性の健康に及ぼす影響も危惧されるため,医療において DV 被害の早期発見に向けてのスクリーニング,介入,連携体制を整えることが急務である。

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© 2005 日本公衆衛生学会
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