日本公衆衛生雑誌
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52 巻 , 9 号
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原著
  • 兜 真徳, 本田 靖, 等々力 英美
    2005 年 52 巻 9 号 p. 775-784
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 地球温暖化による気温上昇,さらに最近国際的に頻発している熱波等に関連して,夏期高温日の健康リスクのモニタリングと適応策の検討が急務とされている。これまでの研究では,高温日の過剰死亡は高齢の循環器や呼吸器疾患患者を主体とする“脆弱集団”に由来し,気象庁発表の日最高気温(Tmax)が東京では33℃以上,北海道では28℃以上で増加すること,また,東京の熱中症発生に関して,Tmax が30℃以上で増加する傾向や,年齢を問わず屋内より屋外の発生が多い傾向などが示されている。本研究では,わが国についての基礎的研究として,上記のように従来曝露温度の指標とされてきた Tmax と,実際に各人が曝露する温度(Tp)との関連を検討することを目的とした。
    対象と方法 個人の曝露温度は,札幌市,東京都,那覇市の居住者計194人(男子101人,女子93人,21才~82才)を対象に,小型携帯用モニター計(Onset Computer Corporation 製,HOBO H8)を用いて 7 月13日~9 月23日(73日間)の任意の 1 週間測定し,同測定期間について自記式の生活時間調査を行った。
    結果と考察 東京と那覇で Tmax が30℃~35℃であった日の昼間(7 時~19時)と(13時~15時)あるいは夕方(19時-24時)の Tp の平均はいずれも,東京で約30℃,那覇で約31℃でほぼ一定となる傾向を示し,Tp と Tmax との相関係数は0.35と低かった。つまり,Tp はこれらレベル以上に上昇しないよう調節されている傾向が明らかであり,同温度近辺に暑熱ストレス耐性の閾値のあることが示唆される。一方,夜間(0 時~7 時)の Tp の平均も東京で約29℃,那覇で約30℃でほぼ一定となる傾向を示したが,これらの温度レベルは比較的高く,とくに夏期に訴えの多い睡眠への影響の原因となっていることが示唆された。両市で Tmax が30℃以上の日の日最低気温(Tmin)は最高でも26℃であり,Tp の日平均値と日最低値の平均はそれぞれ28℃,27℃と,Tp の方が高かった。Tmax との相関係数は,Tmin で0.42,Tp の平均値と最低値のそれぞれの平均値で0.27と0.19と低く,夜間についても,Tmax は Tp と乖離しており,十分な温度調節が行われていないことが示された。
  • 片岡 弥恵子, 八重 ゆかり, 江藤 宏美, 堀内 成子
    2005 年 52 巻 9 号 p. 785-795
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 DV の程度を測定する尺度である日本語版 ISA を用いて,妊娠期女性の DV 被害割合を明らかにし,DV のリスクファクターとして背景因子との関係および精神的な健康への影響を探索する。
    方法 都心部の 1 か所の総合病院の産婦人科に通院する妊婦に対し,2003年 2 月から 5 月継続的に研究協力依頼を行った。研究依頼時(妊娠14週位)に GHQ30,自尊感情尺度,背景調査用紙,妊娠35週以降に妊娠中の状態を反映させるために DV の程度を測定する日本語版 ISA を実施した。
    成績 279人から有効回答が得られた。日本語版 ISA により,妊婦279人中15人(5.4%)が DV 陽性と判定された。日本語版 ISA の下位尺度である身体的暴力は 9 人(3.2%),非身体的暴力は12人(4.3%)であった。DV のリスクファクターとしては,経産婦であること(OR=3.9),過去の身体的暴力(OR=9.1)の 2 点が明らかになった。また DV の精神的な健康に及ぼす影響については,一般的疾患傾向,睡眠障害,不安,うつ傾向,自尊感情との関連が認められた。なかでもうつ傾向は,DV 陽性の妊婦に約12倍多い(OR=11.5)という結果であった。
    結論 DV は妊婦の約 5%,つまり20人に 1 人の割合であり,決して稀なことではないことがわかった。女性の健康に及ぼす影響も危惧されるため,医療において DV 被害の早期発見に向けてのスクリーニング,介入,連携体制を整えることが急務である。
短報
  • 小島 美樹, 埴岡 隆, 浜島 信之, 雫石 聰
    2005 年 52 巻 9 号 p. 796-801
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 歯科患者に継続的に簡便な喫煙の介入を行った場合の禁煙ステージ移動を調べ,介入による禁煙実行への実現可能性を検討した。
    対象と方法 2001年 4 月から一定の条件で簡便な喫煙の介入を受け,2003年 6-12月に禁煙ステージの評価を行った大学病院定期受診患者25人のステージ移動を後ろ向きに調査した。ステージの評価は,Prochaska の分類に準じて行った。喫煙の介入は,患者自身の口腔に現れた喫煙関連疾患や症状および喫煙による治療効果の低下を受診機会毎に話題し,患者が禁煙の実行に関心を示した場合には禁煙方法を話題として禁煙希望に導いた。介入効果の評価は禁煙ステージの移動により検討した。
    成績 対象者の定期受診間隔は 1-6 か月だった。介入前では,無関心期が15人,関心期 5 人,準備期が 5 人で,介入後は,それぞれ,6 人,2 人,1 人であり,16人が禁煙を実行し,禁煙継続者は,9 人だった。関心期,準備期には,それぞれ 1 人ずつが移動し,ステージ移動がみられたのは18人だった。ステージの移動がなかった 7 人のうち,無関心期のままは 6 人,関心期のままは 1 人であった。無関心期と関心期の20人のうち11人が,準備期の 5 人は全員が禁煙を実行した。
    結論 継続的に簡便な喫煙の介入を行うことで歯科患者を禁煙の実行に誘導できることが示唆された。
資料
  • 島貫 秀樹, 植木 章三, 伊藤 常久, 本田 春彦, 高戸 仁郎, 河西 敏幸, 坂本 譲, 新野 直明, 芳賀 博
    2005 年 52 巻 9 号 p. 802-808
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,転倒予防活動プログラムに参加希望した高齢推進リーダーの特性について明らかにすることを目的としている。
    方法 宮城県農村部の70歳~84歳の地域在宅高齢者の中で,転倒予防推進リーダーを希望した75人と希望しなかった一般高齢者1,428人を対象として転倒予防活動事業における高齢推進リーダー参加希望者の特性について検討した。分析では,推進リーダー希望者と一般高齢者の基本属性および身体・心理・社会的要因について記述した。推進リーダー活動への参加希望の関連要因についての分析にあたり,推測統計において有意な関連が認められた変数を説明変数,推進リーダー活動への参加希望の有無を従属変数とする,多重ロジスティック回帰分析を行った。
    結果 その結果,男性,年齢が若い,就学年数が長い,外出頻度が多い,老研式活動能力指標(手段的自立,知的能動性)が高い,健康度自己評価が高い,日常生活動作に対する自己効力感が高い,生活体力得点が高い,QOL 尺度得点(生活活動力,健康満足感,人的サポート満足度,精神的健康,精神的活力)が高い,生きがい感得点が高いという特徴を,推進リーダー活動希望者が有していることが示された。これらの推進リーダー参加希望の有無に有意な関連があった変数を説明変数とする多重ロジスティック回帰分析の結果,推進リーダー活動への参加希望者の特徴は,男性であり(OR=0.25, 95%CI 0.14-0.44),70-74歳の前期高齢者(OR=0.43, 95%CI 0.25-0.73),知的能動性が高く(OR=2.72, 95%CI 1.65-4.48),健康満足感が高く(OR=1.45, 95%CI 1.02-2.07),生きがい感が高い(OR=1.06, 95%CI 1.01-1.13)等であることが示された。
    結論 本研究における高齢推進リーダーは,高次の生活機能を有する者のみが担える役割であったといえる。
  • 川上 ちひろ, 大重 賢治, 和田 誠名, 河野 隆, 常陸 哲生, 久保田 勝明, 杤久保 修
    2005 年 52 巻 9 号 p. 809-816
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 横浜市では,救急車の出動件数の増加に伴い救急隊の運営費が増加していることから,現在効率的な病院前救護体制(119番通報から搬送先病院までの搬送体制)についての検討が行われている。本研究は,病院前救護体制の再構築にあたって,市民の意識を把握しておくため実施されたものである。
    方法 横浜市に在住する20歳以上の男女を対象に,無記名自記式による質問票調査を実施した。質問票は,3,363人に配布され,2,029人から回答を得た(回答率60.3%)。質問は,回答者の属性に関するもの,救急車利用の有料化に関するもの,救急隊運営の効率化に関するもの,救急車利用に代わる対策に関するものである。
    結果 有料化については賛成が65.8%,現状のままが31.0%であり,賛成が多数を占めた。有料化する場合の利用料金としては 3 千円や 5 千円と回答したものが多かった。質問票で提示した運営の効率化については,83.7%の回答者が賛同した。初期救急医療機関の存在は約60%の回答者に認知されていたが,救急医療情報センターや民間救急サービスの認知度は低い値を示した(23.3%と8.3%)。
    考察と結論 救急車利用の有料化や救急隊運営の効率化については,賛成の意見が多数を占めた。しかし,今回の質問票調査では,有料化や運営の効率化の有効性や安全性に関する情報は与えられていないことから,安全性が確保されるなら,といった条件付きでの賛同と受けとめた方が良いと思われる。今後,十分にその影響と安全性の検証を行う必要がある。
  • 片野田 耕太, 廣田 晃一, 松村 康弘
    2005 年 52 巻 9 号 p. 817-823
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 健康日本21地方計画の策定状況および領域・項目設定状況を,自治体区分別に(都道府県,政令指定都市,他の保健所政令市,東京特別区,一般の市,町,村)調べること。
    方法 全国の地方自治体宛に郵送調査および健康日本21地方計画書の送付依頼を行った。
    成績 郵送調査に回答した市町村および東京特別区1954(回答率61.0%)のうち,自治体区分別の策定率(策定中含む)は,保健所政令市および東京特別区100%,一般の市64.9%,町40.7%,村38.8%であった。策定済と答えた500市区町村のうち,計画のウェブでの公開率(公開予定を含む)は,政令指定都市100%,他の保健所政令市67.6%,東京特別区85.7%,一般の市38.8%,町13.5%,村14.3%であった。収集した462の地方計画書(47都道府県を含む)を対象に国の健康日本21計画に含まれる領域および項目の設定状況を調べた結果,多くの領域および項目について,一般の市,町,および村の設定率が低い傾向があった。
    結論 健康日本21地方計画策定または中間評価を実効性あるものにするためには,市町村へのより積極的な支援が必要である。
  • 宮川 雅充, 枡谷 清太, 村山 留美子, 松井 利仁, 内山 巌雄
    2005 年 52 巻 9 号 p. 824-832
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 2004年 1 月~3 月における各都道府県の SARS 対策の実施状況を調べた。
    方法 各都道府県の SARS 対策担当部局を対象に質問紙調査を行った。調査では,SARS に関するリスクコミュニケーションおよびクライシスコミュニケーションの観点から必要と考えられる対策の実施状況を尋ねた。対策は,(1)事前対策,(2)情報共有,(3)他県との連携の 3 項目に分類される。
    成績 全都道府県から回答を得た(回収率100%)。質問紙調査の結果を基に,先に述べた 3 項目について,対策の実施状況を評価した。その結果,事前対策および情報共有に関する対策については,全体的に実施率が高い傾向が認められた。しかし,低得点である都道府県も少なからずみられ,事前対策および情報共有に関する対策の充実度には都道府県間で差が認められた。一方,他県との連携に関する対策については,多くの県で実施されていないことが分かった。さらに,全都道府県を外国人医師事例関連府県からの距離に基づいて分類した分析の結果より,外国人医師が通過した府県に近い県ほど他県との連携に関する対策の充実度が有意に高いことが確認された(P<0.001,両側)。このことは,外国人医師が通過した府県が外国人医師事例における連携の不備を見直し,隣接県と連携を取決めていることを示唆している。
    結論 都道府県における SARS 対策の現状を明らかにするとともに,SARS 流行時における他県との連携に関する取決めの締結の必要性など,いくつかの改善すべき点を指摘した。
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