日本公衆衛生雑誌
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原著
健康意識・健康行動をもたらす潜在因子
古谷野 亘上野 正子今枝 眞理子
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2006 年 53 巻 11 号 p. 842-850

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抄録

目的 健康行動と健康意識の間にある構造的な関係を解明し,健康行動・健康意識の発現をもたらす潜在因子の存在を明らかにすることを目的とした。
方法 本研究は,東京都豊島区が2002年に実施した「豊島区民の健康に関する意識調査」の 2 次解析によって行われた。調査は,同区に居住する20~79歳の男女3,000人を対象として郵送法により実施され(有効回収率54.3%),回答者のうち欠損値のない1,301人のデータが分析に用いられた。健康意識・健康行動に関わる23の質問項目を観測指標とする 2 次因子モデルを作成し,解析した。
結果 解析の結果,23個の観測指標と 9 個の第 1 次因子,1 つの第 2 次因子から成るモデルの適合度は高く,健康意識・健康行動の構造を説明するモデルとして妥当なものであることが明らかになった。23項目の健康意識と健康行動は,いずれも潜在的な第 2 次因子「健康志向」の反映であった。第 2 次因子「健康志向」の因子得点は,健康教室や健診などの保健所事業への参加意向をもつ者で有意に高かった。
結論 本研究の結果は,健康志向の強化によって,健康意識の向上と健康行動の実践をもたらしうることを示している。従来からの保健所事業には健康志向の弱い人は参加しない傾向にあり,再考の必要のあることが示唆された。

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© 2006 日本公衆衛生学会
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