日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
虚弱高齢者における包括的筋力トレーニングがQOL に及ぼす影響
千葉 敦子三浦 雅史大山 博史竹森 幸一山本 春江
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2006 年 53 巻 11 号 p. 851-858

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抄録

目的 介護予防筋力トレーニング事業マニュアルに基づいた包括的な筋力向上トレーニングプログラムとして実施したトレーニング教室が,虚弱高齢者の健康関連 QOL に及ぼす影響を検討した。
方法 包括的筋力トレーニングプログラムに参加した虚弱高齢者19人を対象とした。健康関連評価スケール(MOS36-Item Short-Form Health Survey: SF36v2)を用い,トレーニング前,トレーニング後,トレーニング終了 3 か月後の QOL を評価した。
 対象者の感想及び主観的な効果について聞き取り調査を行い,質的な内容分析を行った。
成績 本対象者と同年齢の層別日本国民標準値の SF36v2 における QOL 得点の一致を予め確認した。包括的筋力トレーニングの実施に伴い,時間的に有意な変化がみられた健康関連 QOL は,8 項目中「身体機能」,「身体の痛み」,「全体的健康感」,「活力」の 4 項目であり,いずれもトレーニング前に比しトレーニング後で改善していた。トレーニング終了 3 か月後の評価では,「身体機能」のみ有意な改善が認められ,他の QOL についてはトレーニング前と変化がみられなかった。トレーニング終了 3 か月後においても,「身体機能」に関する QOL の改善効果は維持されることが明らかになった。
 主観的な効果に関する聞き取り調査では,【行動を行うことの容易性】,【幸福感・満足感の向上】,【継続の意欲】が抽出された。
結論 包括的筋力トレーニングが,虚弱高齢者の QOL 向上に影響を与えたことが示唆された。また,「身体機能」に関する QOL は,トレーニング終了 3 か月後においても改善効果が維持継続されることが示された。

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© 2006 日本公衆衛生学会
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