日本公衆衛生雑誌
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地域住民による栄養成分表示の参考の実態
田中 恵子池田 順子福田 小百合入江 祐子
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2006 年 53 巻 11 号 p. 859-869

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抄録

目的 地域住民を対象に栄養成分表示(以下成分表示と省略)を参考にしている者の特徴を明らかにして,今後の成分表示の普及と制度のあり方を検討していくための基礎的な知見を得ることを目的とした。
方法 平成16年11月に実施した京都府乙訓保健所健康づくり・生活習慣状況調査の有効回答者である20歳から79歳までの男女2,112人を解析対象者とした。食品購入時と外食における成分表示の参考状況を調べ,対象者を成分表示参考区分として参考群と非参考群に分類した。これらの 2 区分と生活習慣との関連はクロス集計で,食生活状況の検討は食生活スコアを算出して区分間の差を検討した。なお,解析はすべて性・年齢階級別に行った。
結果 1) 対象者の42.3%が成分表示を参考にしていた。性・年齢階級別の検討から,男性の20~59歳においては,外食の成分表示を参考にする必要性が高いにもかかわらず,成分表示をみたことがあっても参考にしない者が多いという問題点が示された。
 2) 成分表示の参考状況と生活習慣との関連を検討した結果,健康への意識が高く,好ましい生活習慣を有する者ほど成分表示を参考にしているという実態が示された。
 3) 幾つかの性・年齢階級で,健康情報を新聞や雑誌,専門書などの活字から得る習慣のある者に,参考群の割合が高いという関連がみられた。
 4) 男性の60~79歳で糖尿病や肥満の,女性の60~79歳では高脂血症の指摘や治療経験がある者に参考群の割合が高かったが,関連がみられた階級においても参考群の割合は半数以下であった。また,高血圧症においては,女性の60~79歳で,指摘や治療経験がある者に参考群の割合がより低い傾向がみられた。
結論 今後の成分表示の普及においては,20~59歳男性住民に重点を置き,さらに,いまだ現行の成分表示を参考にしていない者は,すでに参考にしている者に比べて,健康への意識が低い,好ましくない生活習慣を有している,健康情報を新聞,雑誌あるいは専門書などの活字から得る習慣がないという傾向があることを踏まえる必要があると考えられた。

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