日本公衆衛生雑誌
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悲嘆緩和を目的とする某インターネットセルフヘルプグループの現状調査
片山 佳代子坂口 早苗坂口 武洋
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2006 年 53 巻 6 号 p. 424-431

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抄録

目的 近親者との死別,とりわけ配偶者との死別経験はその後,遺族に身体的・精神的にも大きく影響を与えるライフイベントとして知られている。
 死別体験者のセルフヘルプグループが悲嘆プロセスの適応や生活の再構成などの悲嘆緩和の手助けとなることは,近年広く知られるようになった。しかし,遺族がこうしたセルフヘルプグループと出会い,実際にメンバーとして参加することは容易なことではない。本研究は情報化が進む社会的背景を踏まえ,現在増えつつあるインターネット上で活動するセルフヘルプグループ(electronic support group)に焦点をあて,死別体験者のセルフヘルプグループの実態を調査したので報告する。
方法 配偶者と死別し,インターネット上で活動しているセルフヘルプグループに参加している人たちを対象に,喪失体験時期,入会方法,主観的悲嘆緩和効果などについて質問した。一定期間専用のホームページを開設して質問紙を掲載し,各自直接アクセスする形で無記名の自記式にて回答を依頼した。また,アンケートに回答した者の中から 4 人を対象に自由記述式調査を依頼した。
結果 調査対象者数は132人(男性39人;29.5%,女性93人;70.5%)であり,年齢構成は20歳代5.3%,30歳代48.5%,40歳代35.6%,50歳代6.1%,60歳以上4.5%であった。喪失体験時期は,1 年未満13.6%,1~3 年未満28.8%,3~5 年未満30.3%,5 年以上27.3%であった。図式投影法によると,約70%の者は夫婦との関係について親密型(密着・同化)を選択した。 インターネットセルフヘルプグループへの入会方法は,インターネットの検索が58.3%,紹介が25.8%,偶然にサイトに辿り着いた者が9.1%であった。セルフヘルプグループに参加することによる主観的悲嘆緩和効果については,約80%の者が認めていた。
 個別の自由記述式質問紙調査の結果からは,死別間もない時期であっても,時間・場所の制約を受けずにインターネットセルフヘルプグループへ参加でき,心の支えになったことがわかった。
結論 インターネットセルフヘルプグループは遺族にとっては,死別間もない時期から容易に参加することのできるセルフヘルプグループであり,悲嘆緩和の第一歩である悲しみのわかちあいや相互援助効果から約 8 割の者が主観的悲嘆緩和効果を認めていることが判明した。今後は必要としている者が必要なセルフヘルプグループに辿りつけるようなインターネット上のセルフヘルプグループの情報整理が求められる。

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© 2006 日本公衆衛生学会
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