日本公衆衛生雑誌
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原著
アレルギー疾患を有する学生の食事脂肪酸摂取状況と血清および赤血球膜脂肪酸構成
仲野 裕美住野 公昭
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2007 年 54 巻 3 号 p. 145-155

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抄録

目的 アレルギー疾患を有する学生における脂肪酸(FA)栄養の指導上有用な科学的知見を得ることを目的とした。
方法 19~20歳の女子学生128人を対象に,食物摂取状況調査,血液検査,身体計測を行った。さらに,血清および赤血球膜のガスクロマトグラフィによる脂肪酸分析を行った。また,アレルギー疾患についてアンケート調査を行い,「正常群」59人,「既往群」45人,「アレルギー群」24人の 3 群に分けた。食事 FA が血清 FA および赤血球膜 FA 構成に及ぼす影響について,統計解析を行い,3 群間で比較検討した。
結果 1. 全対象者において,食事 FA の中で食事 n-3(g)のみが,食事摂取基準の目標量(2.2 g 以上)を充たしていなかったが,身体計測値,血液検査値にアレルギー疾患の影響は認められなかった。一方,食事 n-3(g)は,赤血球膜 n-3(%)と負の相関を示し,食事 n-3(%)は好酸球数(%)と正の相関を示した。また,血清 n-3(%)は食事 S(飽和脂肪酸)(%)と正の相関を示した。
 2. アレルギー群において,反映比赤血球膜 M(一価不飽和脂肪酸)(%)〔赤血球膜 M (%)/食事 M (%)〕は高値であった。また,アレルギー体質群(アレルギー群+既往群)の赤血球膜 M (%)は食事 S (%)と負の相関を示した。
結論 全対象者は食事 n-3(g)は不足していたが,食事 n-3(g)を増加すると赤血球膜 n-3(%)は低値となり,また,食事 n-3(%)を増加すると好酸球数(%)を増加させる可能性がある。栄養指導時には,食事 S (%)の増加に留意すると,血清 n-3(%)が高値になり,特に,アレルギー体質群は,赤血球膜 M (%)が低値になる可能性が示唆された。

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© 2007 日本公衆衛生学会
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