日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
資料
全国保健所ウェブサイトの情報発信内容とユーザビリティ,アクセシビリティ評価
瀬戸山 陽子中山 和弘
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 55 巻 2 号 p. 93-100

詳細
抄録

目的 近年のインターネット普及と市民の健康情報ニーズの高まりを受けて,全国の保健所ではウェブサイト(以下サイト)による情報発信がされている。しかしその開設状況や情報発信内容は一定しておらず,地域住民の活用に対する配慮が不十分であることが考えられた。そこで全国保健所サイトの現状を把握するための調査を行ったので,ここに報告する。
方法 検索エンジンに保健所名および「ウェブサイト」もしくは「ホームページ」というキーワードを入れて検索を行った。全国保健所長会のサイトも参考にした。検索可能だったサイトを対象に,開設状況,事業別情報発信内容,利用者にとっての使い勝手を表すユーザビリティ,さらに障害の有無に関わらず利用できるかを表すアクセシビリティの 4 点について集計を行った。調査は2005年10月と2006年 9 月の 2 回行った。
結果 全国保健所のうちサイトを開設していた割合は2005年60.8%, 2006年63.2%(以下抄録内,数字は順に2005年,2006年の結果とする)であった。情報発信内容は「感染症」(以下「 」は,発信内容項目を示す)の記載が72.1%, 86.7%と最も多く,次いで「食物関係(66.1%, 68.3%)」,「環境関係(61.3%, 63.0%)」だった。「思春期」に関しての記載は9.3%, 18.6%だった。ユーザビリティは,「所在地連絡先」を記載しているサイトが88.9%, 90.8%と最も多く,次いで「周辺地図(74.5%, 78.1%)」,「メールアドレス公開(65.2%, 66.0%)」であった。「オンライン手続き」機能は1.8%, 2.1%のみだった。アクセシビリティに関しては,1 サイトあたり平均54.2個,56.6個のバリアが存在した。具体的なバリアとしては「白黒でも理解できるようになっていない(75.7%, 78.7%)」,「明滅(明るさの変化)の機能が利用されている(73.6%, 76.0%)」が多かった。
結論 全国半数以上の保健所がインターネット上にウェブサイトを公開しており,保健所サイトは地域住民の身近な情報源として利用可能であることが考えられた。しかし情報発信内容,ユーザビリティ,アクセシビリティは一定しておらず,情報発信者である保健所によってサイトの改善余地があることが伺えた。地域住民のサイト活用へ配慮し,ガイドラインの作成,探しやすさの工夫,利用者のニーズ調査と評価が求められると考えられた。

著者関連情報
© 2008 日本公衆衛生学会
前の記事 次の記事
feedback
Top