日本公衆衛生雑誌
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55 巻 , 2 号
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原著
  • 平部 正樹, 長谷川 友紀, 藤城 有美子, 城川 美佳, 福地 修, 中川 秀己
    2008 年 55 巻 2 号 p. 65-74
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 乾癬特異的 QOL 尺度と包括的健康関連 QOL 尺度を用いて,属性や病状が乾癬患者の QOL に与える影響を明らかにした。
    方法 対象は東京慈恵会医科大学 4 病院の皮膚科外来で乾癬と診断された患者228人である。調査期間は2005年 5 月から2006年 1 月である。医師記入用調査票は,対象者の属性,合併症および生活習慣,罹病期間,皮疹面積,身体の各部位における皮疹範囲,乾癬の総括的重症度を示す Psoriasis Area and Severity Index(PASI)スコアなどからなる。また患者記入用調査票は,自己評価による皮疹面積,自己評価を加味した総括的重症度を示す Self-PASI スコアに加え,乾癬特異的 QOL 尺度として Psoriasis Disability Index(PDI)日本語版,包括的健康関連 QOL 尺度として Short Form 36(SF-36)から構成される。
    結果 調査票は216人から回収され,PDI および SF-36の過半数の項目について回答を得た200人を有効回答とした。PDI では,日常生活,仕事・学業の領域で,また,SF-36では,全体的健康感以外のいずれの領域においても男性より女性で QOL が低かった。QOL に関連する要因について男女別に重回帰分析を行ったところ,PDI については男性では現年齢,PASI および Self-PASI が関連していたが,PASI の関連がより強かった。女性では PASI と Self-PASI が関連していたが,Self-PASI との関連がより強かった。SF-36については,男性では PASI と Self-PASI がともに関連していたが,女性では Self-PASI のみが関連していた。PDI と SF-36の比較では,PDI で重症度との関連がより強かった。女性においては,Self-PASI のほうが PASI よりも QOL との関連が強く,QOL を考慮した治療においては症状の自己評価を加味した Self-PASI がより有用であることが示唆された。
    結論 乾癬患者の QOL の維持・向上のためには,その重症度や,年齢・性別といった背景要因を検討することが重要であることが明らかとなった。また,乾癬患者の治療・状態把握に,Self-PASI や PDI の利用が推奨されることが示された。
  • 松本 健二, 高橋 峰子, 田守 昭博, 西口 修平
    2008 年 55 巻 2 号 p. 75-82
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 大阪市における C 型肝炎ウイルス(HCV)検診の現況と肝炎フォローアップ事業の有用性を検討したので報告する。
    方法 対象は,平成15~17年度の基本健診受診時に,HCV 抗体検査を受けた40歳以上の希望者で,3 年間の総受診者数は83,458人であった。HCV 陽性者を支援するため,肝炎フォローアップ事業を行い,本事業に同意した者には,医療機関からの精密検査結果通知書の返送の有無で,精密検査の受診状況を把握した。結果が未返送の者へは,おおむね 3 か月・6 か月後の 2 回保健師が電話や訪問で受診確認,および受診勧奨を行った。また,精密検査結果通知書と医療機関からの 2 年間の診療継続報告書から,医療機関における精密検査の内容や治療方針等を全例把握し,評価を行って,医療機関に対し個別に情報提供を行った。一方,本事業の同意が取れなかった者は,精密検査の結果を把握するのみであった。
    結果 HCV 抗体陽性率は,平成15年度が3.9%,平成16年度が3.8%,平成17年度が3.0%と年々低下していた。
     肝炎フォローアップ事業の同意率は,平成15年度52.2%,平成16年度56.2%,平成17年度59.1%であった。本事業の同意ありと,同意なしで精検受診率を比較してみると,平成15年度の同意ありの群で82.6%,同意なしの群で37.5%,平成16年度の同意ありの群で77.1%,同意なしの群で37.7%,平成17年度の同意ありの群で78.0%,同意なしの群で34.3%と,いずれの年度も同意ありの群で有意に高かった(P<0.001: χ2 検定)。
     返送された診療情報から,診療情報提供を行った。平成15年度が延べ153件,平成16年度が延べ105件,平成17年度が延べ58件であった。内容では,画像検査の未実施が107件(33.9%)と最も多く,次いで,HCV サブタイプや,定量検査の未実施,最終的なウイルスの有無を確認するための HCV-RNA 定性検査の未実施などが多かった。また,HCV 陽性にもかかわらず,肝機能正常のため,フォロー終了となっているケースが50件(15.8%),HCV-RNA 定性検査が未実施にもかかわらず,フォロー終了となっているケースが15件(4.7%)あり,フォローが必要であるという情報提供を行った。
    結論 HCV 陽性者が,適切に精密検査やフォローアップを受けるためには,受診確認や受診勧奨などの支援が有効であり,医療機関に対する情報提供など,幅広く行う必要があると考えられた。
資料
  • 河野 あゆみ, 板東 彩, 津村 智惠子, 串山 京子, 元重 あき子, 今木 雅英
    2008 年 55 巻 2 号 p. 83-92
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 本研究では,ある地域で介護認定を受けていない独居高齢者を対象とした悉皆調査を行い,介護予防事業対象者把握における基本チェックリストと地域看護職の判断との内容を比較検討することである。
    方法 一次調査は郵送にて,総合的移動能力と厚生労働省による基本チェックリストについて調査した。二次調査では,地域看護職による訪問面接を行い,介護予防支援の必要性を判断した。
     住民基本台帳による A 町全独居高齢者のうち介護認定を受けていない677人に一次調査を行った結果,501人の質問紙が返送された。一次調査から非独居者,要介護認定者,交通機関を使って外出可能な者を除外し,110人を二次調査対象とし,そのうち,二次調査時に拒否,死亡,転居,不在,要介護認定者,介護認定申請が必要であった者等を除外した79人を分析対象とした。
    結果 看護職の判断による介護予防事業対象者は33人(40.7%)であり,基本チェックリストによる介護予防事業対象者は12人(15.2%)であった。
     看護職の判断と基本チェックリストによる介護予防事業対象者の割合におけるカッパ係数は0.17であり,両者間の一致率は低かった。看護職による判断の介護予防事業対象者の支援内容で多かったものは,運動器の向上(66.7%),うつ予防(42.4%),閉じこもり予防(39.4%)であり,基本チェックリストでは口腔機能改善(50.0%)と栄養改善(41.2%)であった。基本チェックリストにて,口腔ケアや栄養改善が必要とされていた者は,看護職の判断ではこれらの支援が必要とされていなかった。3 種類以上の支援内容が必要とされていた者は,看護職の判断では,24.2%みられていたのに対し,基本チェックリストでは,全くみられなかった。
    結論 独居虚弱高齢者において介護予防事業対象者を把握する際に,基本チェックリストでは看護職が判断する介護予防事業対象者を見逃す可能性が示された。一方,栄養改善や口腔ケアの必要な対象者を看護職は見落としやすいと考えられ,今後これらに関するアセスメント内容を改善することが必要と考えられた。また,基本チェックリストと看護職の判断では必要とされる支援内容が異なることが明らかにされた。
  • 瀬戸山 陽子, 中山 和弘
    2008 年 55 巻 2 号 p. 93-100
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 近年のインターネット普及と市民の健康情報ニーズの高まりを受けて,全国の保健所ではウェブサイト(以下サイト)による情報発信がされている。しかしその開設状況や情報発信内容は一定しておらず,地域住民の活用に対する配慮が不十分であることが考えられた。そこで全国保健所サイトの現状を把握するための調査を行ったので,ここに報告する。
    方法 検索エンジンに保健所名および「ウェブサイト」もしくは「ホームページ」というキーワードを入れて検索を行った。全国保健所長会のサイトも参考にした。検索可能だったサイトを対象に,開設状況,事業別情報発信内容,利用者にとっての使い勝手を表すユーザビリティ,さらに障害の有無に関わらず利用できるかを表すアクセシビリティの 4 点について集計を行った。調査は2005年10月と2006年 9 月の 2 回行った。
    結果 全国保健所のうちサイトを開設していた割合は2005年60.8%, 2006年63.2%(以下抄録内,数字は順に2005年,2006年の結果とする)であった。情報発信内容は「感染症」(以下「 」は,発信内容項目を示す)の記載が72.1%, 86.7%と最も多く,次いで「食物関係(66.1%, 68.3%)」,「環境関係(61.3%, 63.0%)」だった。「思春期」に関しての記載は9.3%, 18.6%だった。ユーザビリティは,「所在地連絡先」を記載しているサイトが88.9%, 90.8%と最も多く,次いで「周辺地図(74.5%, 78.1%)」,「メールアドレス公開(65.2%, 66.0%)」であった。「オンライン手続き」機能は1.8%, 2.1%のみだった。アクセシビリティに関しては,1 サイトあたり平均54.2個,56.6個のバリアが存在した。具体的なバリアとしては「白黒でも理解できるようになっていない(75.7%, 78.7%)」,「明滅(明るさの変化)の機能が利用されている(73.6%, 76.0%)」が多かった。
    結論 全国半数以上の保健所がインターネット上にウェブサイトを公開しており,保健所サイトは地域住民の身近な情報源として利用可能であることが考えられた。しかし情報発信内容,ユーザビリティ,アクセシビリティは一定しておらず,情報発信者である保健所によってサイトの改善余地があることが伺えた。地域住民のサイト活用へ配慮し,ガイドラインの作成,探しやすさの工夫,利用者のニーズ調査と評価が求められると考えられた。
  • 富田 早苗, 横山 美江
    2008 年 55 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 本研究では,地域看護学実習終了時における学生の地域保健活動への関心の程度(関心度)とその関連要因を明らかにし,より効果的な実習を行うための基礎的資料とすることを目的とした。
    方法 対象者は,A 県内の看護系大学で,平成17年 4 月~7 月に地域看護学実習を実施した 2 校に在籍する133人の 4 回生(年生)である。地域看護学実習終了時に調査を実施し,郵送にて回収した。調査内容は,学生の基本情報と地域保健活動への関心度,実習施設や実習経験,現場保健師の実習指導と教員との連携等である。学生の地域保健活動に関する関心度については,意味的微分法(SD 法)を用いて測定し,得点化(関心度得点)した。統計学的分析方法については,質的変数の独立性の検定には χ2 検定を,地域保健活動に関する関心度得点における 2 群間の比較には Mann-WhitneyU 検定を,多群間の比較には Kruskal-Wallis 検定を用いた。
    結果 編入生を除く有効回答者は78人(有効回答率58.6%)であった。入学前に希望していた職種は保健師15.4%,助産師7.7%,看護師64.1%,わからない12.8%であった。本調査結果から,講義・演習をとおして保健師に興味をもった学生,ならびに実習をとおして保健師に興味をもった学生は,実習終了時の地域保健活動への関心度得点が有意に高かった。また,現場保健師の実習指導では,学生の気づきを大切にした指導,具体的でわかりやすい説明,学生が困っているときの声かけ,および現場保健師による学生への過度な期待がなかった場合に地域保健活動への関心度得点が有意に高かった。
    結論 本研究結果より,大学の講義・演習あるいは実習経験により保健師に興味をもった学生は地域保健活動への関心度得点が高く,さらに,現場保健師による 4 つの実習指導手法が学生の地域保健活動への関心度を高めることが明らかとなった。今後,学生の地域保健活動への関心を高めるような講義・演習内容の検討,ならびに実習指導の充実が望まれる。
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