日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
原著
特定高齢者の体力を把握するためのテストバッテリ
清野 諭藪下 典子金 美芝根本 みゆき松尾 知明深作 貴子奥野 純子大藏 倫博田中 喜代次
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 56 巻 10 号 p. 724-736

詳細
抄録
目的 本邦では,新たに改正・施行された介護保険法のもと,特定高齢者に向けた地域支援事業が展開されている。運動機能の評価項目としては,おもに握力,開眼片足立ち,5 m 通常歩行の 3 項目が活用されている。これらの項目は広く普及している一方で,特定高齢者への適用の妥当性に関する検証は十分になされていない。そこで,本研究では特定高齢者と一般高齢者の体力的相違に基づいた上で,特定高齢者用の体力テストバッテリを提案することを目的とした。
方法 特定高齢者127人(76.6±5.9歳)と一般高齢者315人(72.2±5.8歳)を対象に,日常生活動作および移動能力に関連した12項目の体力測定を行った。特定高齢者は,「特定高齢者の決定方法および選定方法」に準拠して抽出された。特定高齢者の該当・非該当を従属変数としたロジスティック回帰分析によってテストバッテリを選定し,主成分分析を用いて体力得点による評価指標を作成した。作成した評価指標を別の集団(特定高齢者28人,一般高齢者143人)に適用することで交差妥当性を検討した。さらに,3 か月間の運動介入ができた特定高齢者62人を対象に,運動介入による評価指標の妥当性についても検討した。
結果 ロジスティック回帰分析の結果,タンデムバランス,5 回いす立ち上がり,ステップテスト,アップ&ゴーが採択され,この 4 項目でテストバッテリを作成した。主成分分析の結果,第一主成分が体力の総合力をあらわすと判断され,次のような体力得点による評価指標を作成した。体力得点=0.031X1−0.106X2−0.192X3−0.096X4+1.672,X1:タンデムバランス,X2:5 回いす立ち上がり,X3:ステップテスト,X4:アップ&ゴー。また,receiver operating characteristic(ROC)解析によって求められた特定高齢者と一般高齢者の体力得点のカットオフ値は,0.065(感度82.2%,特異度81.9%)であった。体力得点推定式およびカットオフ値の交差妥当性は良好であり,特定高齢者への運動介入による体力変化がとらえられるものであった。
結論 本研究で提案した特定高齢者用の体力テストバッテリは,妥当な体力評価が可能であり,特定高齢者施策などの現場および研究フィールドでの活用が期待できるものである。
著者関連情報
© 2009 日本公衆衛生学会
前の記事 次の記事
feedback
Top