日本公衆衛生雑誌
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原著
事業・社会資源の創出に関する保健師のコンピテンシー評価尺度の開発 信頼性・妥当性の検討
塩見 美抄岡本 玲子岩本 里織
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2009 年 56 巻 6 号 p. 391-401

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抄録

目的 保健師の事業・社会資源の創出に関するコンピテンシーを評価する尺度の開発に向け,先行研究において尺度項目を精選し,尺度原案を作成した。本研究では,この尺度原案の信頼性,妥当性を検討することを目的とする。
方法 尺度原案について,郵送による無記名自記式の質問紙調査を行った。調査対象は,無作為抽出した全国保健所 4 分の 1,市町村保健センター20分の 1 に常勤する保健師全員であった。調査内容は,尺度原案と,事業・社会資源の創出能力に関する外部変数,経験年数,役職などの属性,学習会参加の有無であった。
 尺度の表面妥当性の検討のため,尺度項目ごとに通過率を算出した。項目分析で尺度項目を精選した後,因子分析を行い,構成概念妥当性を検討した。信頼性の検討には,クロンバック α 係数,折半法を用いた。基準関連妥当性の検討には,外部基準との相関係数を算出した。また,尺度の活用可能性を検討するため,尺度得点と回答者の属性や学習会参加の有無との関連をみた。
結果 送付施設数250中184(73.6%)から返送があり,返送施設の対象数1,799人中回答者は1,261人(70.1%),うち有効回答は1,112人(61.8%)であった。
 各尺度項目の平均値は,1.97から3.44の範囲であった。
 尺度項目ごとの通過率は,いずれの項目も96.0%以上であり,表面妥当性が認められた。項目分析によって,24項目中 6 項目を削除した。因子分析によりさらに 2 項目を削除し,3 因子16項目で最適解を得た。各因子名は「創出の必要性の把握」,「創出の推進と具現化」,「創出に向けた協同」とした。クロンバック α 係数や,折半法による信頼係数は,0.76から0.95の範囲であり,信頼性が認められた。外部変数との相関係数は,0.50から0.69の範囲であり,外部変数と尺度得点との相関が認められた。回答者の経験年数,所属機関,役職,学習会参加の有無による尺度得点の差を検定した結果,いずれにおいても有意確率 1%で有意な差が認められた。
結論 保健師の事業・社会資源の創出に関するコンピテンシーを測る尺度原案を作成し,その信頼性・妥当性を検討した結果,3 因子16項目から成る尺度が得られ,各因子および尺度全体において,信頼性・妥当性が確認された。
 尺度得点には,経験年数,所属機関,役職,学習会参加との関連が認められ,これは既存文献の示す知見と同様であった。
 本研究で得られた尺度は今後,保健師の事業・社会資源の創出能力の自己評価に活用可能である。

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© 2009 日本公衆衛生学会
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