日本公衆衛生雑誌
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原著
高齢者向けの「社会活動に関連する過ごし方満足度尺度」の開発と信頼性・妥当性の検討
岡本 秀明
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2010 年 57 巻 7 号 p. 514-525

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抄録

目的 高齢者の社会活動全般の主観的効果の把握を主眼とした高齢期の過ごし方の満足度を把握する「社会活動に関連する過ごし方満足度尺度」を作成し,その信頼性と妥当性を検討することを研究目的とした。その際,高齢者がおもに社会活動により得られるいくつかの主要な要素に対する具体的な効果を把握するアプローチをとった。
方法 アイテムプールを検討して設定した尺度構成項目案16項目に対し,相関分析や探索的因子分析などにより項目選択を行った。尺度の妥当性は,検証的因子分析,基準関連妥当性(併存的妥当性),下位尺度と活動の有無との関連性により検討した。尺度の信頼性は,Cronbach の α 係数により検討した。分析対象者は,千葉県市川市の高齢者(65~84歳)755人であった。
結果 探索的因子分析の結果,「学習に関する満足度」,「他者•社会への貢献に関する満足度」,「健康•体力に関する満足度」,「友人に関する満足度」の 4 因子14項目という構造が得られた。この尺度の構造を検証的因子分析により検討した結果,尺度の適合度を示す指標は,GFI=0.943, AGFI=0.915, RMSEA=0.068という数値を示した。基準関連妥当性(併存的妥当性)を検討した結果,尺度全体および下位尺度の得点は,日頃の活動満足度,日頃の生活における充実感,日頃の過ごし方の満足感,生活満足度,抑うつのすべての変数と有意な関連を示していた。下位尺度と活動の有無との関連を検討した結果,学習活動の有無と「学習に関する満足度」得点,ボランティア活動の有無と「他者•社会への貢献に関する満足度」得点,運動の有無と「健康•体力に関する満足度」得点,趣味の会などの仲間内の活動の有無と「友人に関する満足度」得点との比較のすべてにおいて有意な正の関連がみられた。尺度の信頼性を Cronbach の α 係数により検討した結果,尺度全体が0.919,下位尺度が0.814~0.887であった。
結論 本研究で作成した高齢者向けの「社会活動に関連する過ごし方満足度尺度」は,「学習に関する満足度」,「他者•社会への貢献に関する満足度」,「健康•体力に関する満足度」,「友人に関する満足度」の 4 因子14項目により構成され,信頼性と妥当性を有することが確認された。

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© 2010 日本公衆衛生学会
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