日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
職域における健康教室参加者からの教育波及効果を意図した保健指導プログラムの効果 教室参加者の学習内容の伝達と非参加者への影響
千葉 敦子山本 春江森永 八江藤田 修三
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2011 年 58 巻 2 号 p. 102-110

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抄録

目的 男性の多い職場において健康教室の参加者を通じてより多くの社員に教育効果を波及させることを意図した保健指導プログラムを開発し実施した。本研究では,波及効果の可能性を検討するため,健康教室の参加者から同僚等へ学習内容は伝達されうるのか,非参加者の知識•意欲•行動等に影響は及ぶのかを明らかにした。
方法 鉱石製錬を主業務とする A 株式会社 B 本社全社員479人のうち,健康教室参加者83人および教室終了後に全社員に対して行ったアンケート回答者302人を分析対象者とした。教室参加者に対して自記式質問紙によるアンケートを実施し,学習内容に関する同僚等への伝達意欲および実際の伝達状況を調査した。また,全社員を対象に自記式質問紙にて参加者からの学習内容の授受状況および健康の知識•意欲•行動等への主観的影響を調査した。教室参加の有無と授受状況の関連について χ2 検定で分析した。次に教室非参加者について,参加者からの伝達内容を授受した群(162人)としなかった群(28人)に分類し,教室開催に伴う知識•意欲•行動等への影響を得点化し,群間比較を Mann-Whitney の U 検定により解析した。また,授受した群は授受した項目の数と影響得点との関連を検討した。
結果 健康教室参加者の 9 割が学習内容に関して同僚等へ伝達したいという意欲を有し,実際には回答者の 7~8 割が伝達を行っていた。これら参加者の伝達内容について,いずれかの項目を授受した社員は256人(84.8%)であり,1 回でも教室に参加したことがある教室参加群で有意に高かった。教室非参加者では,伝達内容を授受した群で知識•意欲•行動等に良好な影響があったと回答した人が有意に高く,授受項目数と影響得点には正の相関がみとめられた。
結論 男性が多い500人程度の職場規模にあっては,健康教室の参加者を通じて学習内容が人から人へ伝達されうることが示された。また,教室に参加していない社員においては,参加者からの情報の授受が多い人ほど健康に関する知識•意欲•行動等に良好な影響があったことから,教育効果を波及させることが可能であることが示唆された。

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