日本公衆衛生雑誌
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58 巻, 2 号
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原著
  • Lei XU, Kazuhito YOKOYAMA, Ying TIAN, Feng-Yuan PIAO, Fumihiko KITAMUR ...
    2011 年 58 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    Objectives To assess the effects of trace metals on birth weight and gestational age among newborn babies of mothers without occupational exposure.
    Methods The subjects examined were 142 newborn babies (71 males and 71 females) delivered at two university hospitals in Shanghai, China and their parents. Relationships of newborn birth weight and gestational age to concentrations of arsenic, lead, cadmium, manganese, zinc, and cobalt in maternal and cord blood were investigated.
    Results Birth weight was 3379.5±440.8 (2090-4465) g and the gestational age was 39.7±1.3 (35-43) weeks. Stepwise regression analysis indicated that, in the male newborn, birth weight and gestational age were inversely related to the logarithm arsenic concentration (4.13±3.21 μg/l) in mothers' whole blood.
    Conclusion Arsenic might have a negative influence on newborn birth weight and gestational age at a relatively low exposure level. This effect was observed in male but not female babies, suggesting a sex differential in susceptibility to arsenic at an early stage of development. Although birth weight is believed to be related to gestational age, arsenic may directly affect both birth weight and gestational age.
公衆衛生活動報告
  • 中根 明美, 山口 幸生, 甲斐 裕子, 中田 三千代
    2011 年 58 巻 2 号 p. 96-101
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 地域保健事業において,形式の異なる生活習慣改善プログラム選択の参加者属性とプログラム継続者と脱落者を判別する要因を検討する。
    方法 対象者は,平成14~17年度までに地域保健事業として実施された生活習慣改善プログラム(面接型•通信型)に参加した者であった。募集の周知方法や参加に関する募集条件,教室の実施期間は全く同じだった。面接型は 2 か月間に集団指導 1 回,保健師との個人面接を 3 回実施した。通信型は完全な非対面であり,コンピューターが個人に合わせて自動作成した教材を,保健師が参加者に 2 週間ごとに計 4 回郵送した。
    結果 参加者は,対面型321人で平均年齢は60.3±9.4歳,男性48人(15.0%),有職者69人(21.5%),通信型は90人で平均年齢50.2±11.5歳,男性39人(43.3%),有職者56人(62.2%)であった。分類 2 進木分析の結果,プログラム選択の分岐変数は年齢,仕事の有無,中性脂肪値,性別であった。継続率は面接型が274人(85.4%),通信型は57人(63.3%)であった。継続と脱落を判別する分岐変数はプログラム形式,ウエスト周囲径,HDLコレステロール値であった。
    結論 プログラム選択の参加者属性は年齢,仕事の有無,中性脂肪値,性別であった。継続者と脱落者を判別する要因はプログラム形式,ウエスト周囲径,HDLコレステロール値であった。若い層や有職者,男性が地域保健事業に参加するためには,形式の異なるプログラムを用意することは有効であり,脱落しやすい層へ丁寧に対応することで脱落者を減らせる可能性がある。
  • 千葉 敦子, 山本 春江, 森永 八江, 藤田 修三
    2011 年 58 巻 2 号 p. 102-110
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 男性の多い職場において健康教室の参加者を通じてより多くの社員に教育効果を波及させることを意図した保健指導プログラムを開発し実施した。本研究では,波及効果の可能性を検討するため,健康教室の参加者から同僚等へ学習内容は伝達されうるのか,非参加者の知識•意欲•行動等に影響は及ぶのかを明らかにした。
    方法 鉱石製錬を主業務とする A 株式会社 B 本社全社員479人のうち,健康教室参加者83人および教室終了後に全社員に対して行ったアンケート回答者302人を分析対象者とした。教室参加者に対して自記式質問紙によるアンケートを実施し,学習内容に関する同僚等への伝達意欲および実際の伝達状況を調査した。また,全社員を対象に自記式質問紙にて参加者からの学習内容の授受状況および健康の知識•意欲•行動等への主観的影響を調査した。教室参加の有無と授受状況の関連について χ2 検定で分析した。次に教室非参加者について,参加者からの伝達内容を授受した群(162人)としなかった群(28人)に分類し,教室開催に伴う知識•意欲•行動等への影響を得点化し,群間比較を Mann-Whitney の U 検定により解析した。また,授受した群は授受した項目の数と影響得点との関連を検討した。
    結果 健康教室参加者の 9 割が学習内容に関して同僚等へ伝達したいという意欲を有し,実際には回答者の 7~8 割が伝達を行っていた。これら参加者の伝達内容について,いずれかの項目を授受した社員は256人(84.8%)であり,1 回でも教室に参加したことがある教室参加群で有意に高かった。教室非参加者では,伝達内容を授受した群で知識•意欲•行動等に良好な影響があったと回答した人が有意に高く,授受項目数と影響得点には正の相関がみとめられた。
    結論 男性が多い500人程度の職場規模にあっては,健康教室の参加者を通じて学習内容が人から人へ伝達されうることが示された。また,教室に参加していない社員においては,参加者からの情報の授受が多い人ほど健康に関する知識•意欲•行動等に良好な影響があったことから,教育効果を波及させることが可能であることが示唆された。
研究ノート
  • 松田 修
    2011 年 58 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 本研究の目的は,公立中学校における生徒のメンタルヘルスの動向と学校での取り組みの現状および課題を明らかにすることである。
    方法 本研究は,2008年11月~2009年 3 月にかけて首都圏(東京都,埼玉県,神奈川県)の47市区町村の公立中学校(507校)に対して実施された「公立中学校生徒の精神保健の現状とこころの病気を学ぶ授業に関する調査」の中から,生徒のメンタルヘルスに関する質問項目のデータを分析した結果である。このデータには,(1)生徒のメンタルヘルスの状況(例,過去 3 年間に増加した問題,精神科の通院状況),(2)学校の対応状況に関する質問が含まれた。2009年 6 月現在,163校から回答を得た(回収率32.1%)。回答者のうち151人(92.6%)が養護教諭または養護主幹教諭であった。
    結果 こころの健康状態に何らかの問題を持つ生徒がいる学校は160校(99%)で,約半数の学校がこうした生徒が過去 3 年間で増えていると回答した。ストレスや悩みごとを抱える生徒,自信を持てない生徒,集中力が持続しない生徒,イライラしやすい生徒が増加したと回答した学校は全体の半数を超えた。こころの健康問題で精神医療の専門機関を受診している生徒がいる学校は全体の84%で,約 3 分の 1 の学校がこうした生徒が増えていると回答した。過去 3 年間にうつ病と診断された生徒がいる学校は全体の37%で,現在も通院中の生徒がいる学校は27%であった。約85%の学校が生徒からこころの健康問題について相談を受ける機会が増えたと回答した。しかしその一方で,約半数の回答者から,こころの健康問題に対応する時間がないという意見や,こうした問題について保護者や医療機関とどのように関わったらよいかわからないという意見が寄せられた。
    結論 今回の調査から,今日の中学生のこころの健康問題の深刻さと,学校としての対応の難しさが示唆された。とくに,学校•保護者•医療機関の連携が目下の課題であるようだ。
  • 湯浅 資之, 池野 多美子, 請井 繁樹
    2011 年 58 巻 2 号 p. 116-128
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 我が国の地域の公衆衛生活動において,現任保健師が認識している近年の現状変化を把握し,地域をみる•考える視点からその変化に対する改善策に関する保健師の意見を聴取した。
    方法 北海道の道立保健所または市町村在勤 5 年以上の保健師を対象にフォーカスグループ•ディスカッション(FGD)を実施し,結果を Berelson の内容分析法により解析した。
    結果 3 回の FGD に参加した保健師24人が認識している現状変化とその改善策は 5 つのカテゴリーに分類された。まず,保健師養成課程の変化と現任教育における問題が指摘され,新人保健師や現任保健師の地域をみる•考える視点強化のための卒後教育体制の改善が提言された。次に,制度変化に伴う保健師業務の変化が挙げられ,業務の拡大,事務職との共同,分散配置による負担増が指摘された一方,事務職や地域関係者の連携を強化すべきとの改善策が出された。また,保健師の心理的変化に関する発言も多く出され,役割,モチベーション,地域活動の変化に伴う悩みが表明された。その対処策として,専門職としての意識改革と能力向上,保健師同士のコミュニケーションの確保が挙げられた。さらに,コミュニティの変化と,市町村•保健所の組織変化が指摘され,対処方策として,現場活動の重視,保健師研修会•会議の活性化と有効活用が提案された。
    結論 保健師のおかれた現状変化に対処するには,現任教育の在り方の再考,保健師の役割とモチベーションの再確認,日々の業務における悩みの共有化,事務職や他機関との連携強化,保健活動活性化のための住民との対話,保健所と市町村の関係の再構築が必要と考えられた。
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