日本公衆衛生雑誌
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原著
市町村国民健康保険加入者における特定保健指導後のメタボリックシンドローム改善効果
春山 康夫武藤 孝司中出 麻紀子山崎 章子樽見 文子
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2012 年 59 巻 10 号 p. 731-742

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抄録

目的 2008年,埼玉県草加市は「特定健康診査•特定保健指導」を開始した。本研究は,特定保健指導対象者における保健指導利用後のメタボリックシンドローム(MetS),その関連指標および生活習慣の改善効果を検討することを目的とした。
方法 研究デザインは準実験研究デザインを用いた。対象者は,2008年度に草加市特定健康診査を受診し,特定保健指導レベルによって階層化された積極的支援対象者500人と動機づけ支援対象者1,483人とした。両群のうちそれぞれ72人,275人が特定保健指導の利用を希望した。特定保健指導では初回面接に加え 6 か月の介入プログラムを行った。対照群は特定保健指導の非利用者とし,全員に MetS に関する情報を提供した。肥満および MetS の変化については,共分散分析(ANCOVA)と多変量ロジステック回帰分析を用いて検討した。
結果 積極的支援と動機づけ支援介入群のうちそれぞれ62人(86.1%)と266人(96.7%)が介入プログラムを終了し,1 年間の追跡後,特定健康診査を受けたのはそれぞれ41人と210人であった。ベースライン値,性および年齢を調整したところ,積極的支援介入群における腹囲(−3.1 cm,P<0.001),BMI(−0.8 kg/m2P<0.001),体重(−2.3 kg,P<0.001)と HbA1c(−0.18%,P=0.016),動機づけ支援介入群における腹囲(−1.3 cm,P=0.001),BMI(−0.5 kg/m2P<0.001),体重(−1.2 kg,P<0.001),収縮期血圧(−2.4 mmHg,P=0.018),および拡張期血圧(−1.8 mmHg,P=0.005),HbA1c(−0.06%,P=0.025)が対照群と比較して有意に多く低下していた。また,1 年後に MetS 該当者から非該当者又は予備群,および予備群から非該当者になった者の割合は,対照群と比較して特定保健指導介入群全体(オッズ比:1.41,95%信頼区間:1.05–1.90)と動機づけ支援介入群(オッズ比:1.39;95%信頼区間:1.00–1.94)において有意に高かった。
結論 積極的支援および動機づけ支援によって,特定保健指導介入群の MetS 改善に一定の効果が得られたことが明らかとなった。

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© 2012 日本公衆衛生学会
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